コラム

 公開日: 2016-12-26 

従業員は命じられた時間外労働や休日労働を拒否できるか?

 時間外労働や休日労働を命じたとき、「終業時刻後は自分の自由な時間だから」とか、「休みの日にまで出勤したくありません」など、特に正当な理由があるわけでもないのに時間外労働や休日労働の要請を拒否する従業員がいます。

 はたして、会社から命じられた時間外労働や休日労働を従業員は拒否することができるのでしょうか。

 結論から言えば、就業規則や雇用契約書などの定めにより、従業員が時間外労働や休日労働を行う義務を負っている場合には、従業員は正当な理由がない限り会社から命じられた時間外労働や休日労働を拒否することはできません。(拒否することができるのは、時間外労働や休日労働を行う義務を負っていない場合だけです。)

 就業規則や雇用契約などの定めにより時間外労働や休日労働を行う義務を負っているにも関わらず、もしこれを拒否すれば、その従業員は”業務命令違反”として、就業規則の定めにもとづき懲戒処分の対象となることになります。 

 36協定届が合法的に締結されて労働基準監督署へ届け出られているうえ、就業規則にも時間外労働や休日労働の定めがあるときは、その定めが合理的なものである限り、それが具体的な労働契約の内容となりますので、従業員は時間外労働や休日労働の義務を負うことになるのです。

 事実、最高裁の判例(日立製作所事件、H3.11.28最高裁第一小法廷判決)においても以下のような趣旨のことが判示されています。
『いわゆる36協定を締結し、これを労働基準監督署長に届け出た場合において、使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該36協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、右就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負うものと解するを相当とする』
 そのうえで、残業命令に従わなかった従業員に対して会社が行った懲戒処分は、懲戒権の濫用に該当すると言うこともできないと判示し、会社が行った懲戒処分は有効でるとの判断を下しています。
 
 また、年末休日出勤命令を拒否して停職・減給などの懲戒処分に処せられた職員が訴訟を提起した北九州市清掃局事件(S59.7.19福岡高裁判決)において、福岡高裁は以下のような趣旨のことを判示しています。
『就業規則の規定に基づいてなした年末休日出勤命令は所定の上司の職務上の命令に当り、特段の事情がない限り職員の個別的な同意を要せずして年末休日労働義務が具体的に発生するものと解すべきである。・・・(中略)・・・従って、職員の個別的同意がなければ具体的な年末休日労働義務は発生しないとか、労働条件明示義務の要件を充足していないとかいう控訴人らの主張は採用することができない。』

 このように、就業規則に時間外労働や休日労働を命じることができる旨の根拠があるにも関わらず、従業員が正当な理由なくこれを拒否することは許されない(拒否した場合には就業規則の定めにもとづき懲戒処分に処すことができる)と言えるのです。

 しかし、逆に言えば、就業規則を作成・周知していない会社の場合、たとえ労働基準監督署に36協定を届け出ていたとしても、個別の雇用契約書で時間外労働や休日労働を命じることができる旨の合意をしておかない限り、時間外労働や休日労働の命令を拒否されても懲戒処分などはできないということになります。

 ちなみに、36協定は、法定労働時間を超えて労働させたり、法定休日に労働させても労働基準法違反として処罰の対象とならないようにするための行政上の手続きに過ぎず、時間外労働や休日労働を命じることが出来る私法(契約)上の効力を生じさせるものではないと解されています。

 会社にとって就業規則がいかに大切か、少なからずご理解いただけたでしょうか。

この記事を書いたプロ

社会保険労務士法人ジャスティス [ホームページ]

経営コンサルタント 高正樹

広島県呉市焼山中央1丁目1-10 TAKAMATSU BLD 203号 [地図]
TEL:0823-30-3012

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
高正樹

中小企業を存続させるための最新の労務管理ノウハウを提供(1/3)

 「大切な会社を守るためのサポーターとして、常に最新の労務管理ノウハウを提供します」。そう力強く話すのは呉市焼山中央「社会保険労務士法人ジャスティス」代表の高正樹さん。「ジャスティス行政書士事務所」と「ジャスティスソリューション」の代表も兼...

高正樹プロに相談してみよう!

中国新聞社 マイベストプロ

中小企業を存続させるための最新の労務管理ノウハウの提供

会社名 : 社会保険労務士法人ジャスティス
住所 : 広島県呉市焼山中央1丁目1-10 TAKAMATSU BLD 203号 [地図]
TEL : 0823-30-3012

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

0823-30-3012

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

高正樹(たかまさき)

社会保険労務士法人ジャスティス

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
なぜ賞与を出しても従業員のやる気が上がらないのか

 従業員の仕事へのモチベーション(やる気)は業績に直結します。このことについて異論がある経営者の方は少ない...

[ 労務管理 ]

退職の申し出は、退職日の3ヶ月前までにしなければならないとする就業規則の規定は有効か?

貴社では、従業員が自己都合で退職しようとする場合には退職日の何日前までに会社に申し出なければならないこと...

[ 就業規則等 ]

マイカー通勤者等から申告された通勤距離の妥当性検証方法

 従業員の通勤に要する費用の全部又は一部を補填するための通勤手当、貴社でも支給されているのではないでしょう...

[ 賃金 ]

ご存知でしたか? 「65歳超雇用推進助成金」

 就業規則等で65歳以上への定年の引上げや、希望者全員を66歳以上まで継続雇用する制度の導入等を行った会社...

[ 助成金 ]

従業員代表の定義は?

 就業規則等の作成や変更について”意見書”に意見を記載したり、36協定をはじめとする各種の”労使協定書”に従業...

[ 就業規則等 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ