コラム

 公開日: 2016-09-30 

公共交通機関の遅延により遅刻し、遅延証明書を提出してきた場合、遅刻控除はできない?

 結論から言えば「控除出来る」ということになります。賃金支払いの基本原則はノーワーク・ノーペイ(民法第624条第1項)です。
 理由はどうであれ、遅刻した時間、約束した労働を提供していないわけですから、法的には賃金を支払う必要はないわけです。

 とはいえ、社員の方は「遅刻したのは自分のせではない」旨を主張しています。例えば労働者の責に帰すべき事由(寝坊など)で遅刻した場合などは、自分に責任があるため、社員の方も賃金を遅刻控除されたとしても異論はないでしょう。
 一方、会社側の責に帰すべき事由(経営難から休業を命じられたなど)で働けなかった場合、会社側の都合で労働働かせてもらえない状況のため、会社には最低でも労働基準法第26条に定める休業手当(平均賃金の60%以上)の支払義務が生じます。

 では、電車遅延といった”社員にも会社にも責任がない場合”はどうなるのでしょうか?
 この場合、民法第536条第1項の危険負担の原則(債権者主義)によれば、双方に責任のない理由で社員が働けなかった場合、社員は働けなかった時間の賃金を会社に請求することは出来ないということになります。そのため、遅刻控除しても問題ありません。
 もっとも、このような場合、民法の当該規定の適用は排除し、賃金は控除せずそのまま支給することにするのは自由です。
 そのため、このような場合、遅刻控除する会社もあれば、「遅延証明書」を提出することにより遅刻控除はしないという会社もあります。これは電車遅延が本人のせいではない = 労働者の責に帰すべき事由にあたらない、という解釈をして運用しているからだと考えられます。

 そこで、まず御社で就業規則や賃金規程を確認してみて下さい。特に電車遅延についての条文や但し書きがない場合は、上記のとおり遅刻控除しても法的に問題はありませんが、今まで遅延証明書の提出により遅刻控除をしていない場合、それが通例として周知されていることになるため、いきなり遅刻控除をすることは乱暴です。
 今後は遅刻控除するのであれば、社員に説明をし、理解や合意を得たうえで控除開始をして下さい。
 一方、今までどおり、遅延証明書の添付があれば控除しないということであれば、就業規則に明記するか、内規を作って取扱いを明確にしておきましょう。

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