コラム

 公開日: 2016-10-08 

マスクを外さない従業員への対応

 最近、マスクを着けたまま業務に従事している人を見かけることがあります。特に接客される際に、意味もなくマスクで顔を半分隠した状態で接客されるのはあまり気持ちのいいものではありません。

 本人に言わせれば、マスクを外さない理由は、花粉症や鼻炎を患っているからとか、風邪等の予防のためとか、ほこりを吸い込んでしまうのが嫌だからという理由からのようです。こんな人の中には、会社がマスクを外すよう注意すると、「人権侵害ではないか!」と反抗的な態度をとる人もいます。

 そこで、ここではマスクを外すよう命じることが本当に人権侵害になるのか否かについてお伝えしたいと思います。

 基本的に、誰であっても”マスクを着用する権利”は憲法13条の幸福追求権として尊重されると考えられます。
 しかしながら、権利はいかなる場合でも絶対的に尊重されるものではありません。
 ①マスクを着ける理由・必要性、②従事する業務の内容、③注意の仕方、④マスクの外させ方などの具体的な事情によって結論は左右されると言えます。

 たとえば、無理矢理マスクを剥がしたりすれば、どんな事情があれ人権侵害ということになる可能性は高いと言えまが、単なる注意ということであれば、その人がマスクを着用すべき理由を有しているか、すなわち、マスクを着用して防ぐべき病気などを持っているか否かによって結論が変わると言えます。

 もし、本人が花粉症や鼻炎などを患っているという場合には、就業規則の定めにもとづき診断書を提出するよう求めても良いでしょう。
 風邪をひいている、花粉症や慢性的な鼻炎などを患っている、あるいは信仰上の理由があるなど、マスクを着用する相当な理由がある人についても、業務中は可能な限りマスクを外すよう協力を求める程度であれば問題ありません。

 しかし、程度を超えてマスクを外すよう強く強要したりすれば、人権侵害になり得ると考えられます。

 逆に、健康上の理由もないのに、単にほこりが嫌いなどの理由であれば、マスクを着用する必要性はそれほど高いとは言えません(特に店舗内での業務などの場合)ので、業務に従事するうえで望ましくないという理由で外すよう注意しても、直ちに人権侵害になるものではないでしょう。

 マスクを外さない人に対する今後の対応としては、業務中はマスクを外すよう命じたにも関わらず、その命令に従わないということであれば、業務命令違反ということで、就業規則の定めにもとづいて”譴責”などの軽い懲戒処分から科していくことは可能と言えます。
 とはいえ、それでもマスクを外さないということであれば、そのまま接客業務を任せるというわけにもいかないでしょう。かといって、それ以外にまわせる職場がないということであれば、退職勧奨などを検討せざるを得ません。

 退職勧奨自体は、解雇と判断されない範囲・程度で行う限り何ら問題はありません。
 ただし、「人権侵害だ!」と主張するような人の場合、すんなり退職勧奨に応じることはないでしょうから、その場合、どうしても辞めさせたいのなら解雇という決断をせざるを得ません。

 解雇の場合、解雇された人が解雇の有効性を争ってくれば、結局前述した内容と同様の判断過程をたどってその有効性が判断されるものと思われます。

 具体的には、業務中もマスクを着用しておかなければならない理由もないのに、マスクを外すよう命じる業務命令に違反し続け、その状態を改善しようとしない場合には、解雇もやむなしと認められる可能性があります。
 しかし、業務中もマスクを着用しておかなければならない相当な理由があるにも関わらず、マスクを外さないことを理由に解雇した場合には、解雇権の濫用として解雇無効と認定され、多額な金銭的負担を強いられることになるでしょう。

 よって、本件のような場合、マスクを外さないという事象だけに着目するのではなく、その事情・背景などを総合的に勘案してケースバイケースで適切に対応していくことが必要と言えます。

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