コラム

 公開日: 2016-09-14  最終更新日: 2016-09-21

年次有給休暇で休んだことが原因で残業、それでも残業手当?

 貴社では、従業員が年次有給休暇(以下「年休」と記載)で休んだことにより仕事が進まず、その結果、その従業員は残業や休日出勤をして仕事をこなさなければならなくなったという事はありませんか? その場合、その残業や休日出勤に対し、残業手当を支払う必要はあるのでしょうか。
 会社としては、従業員が自分の都合で休んでおいて、仕事が間に合わないから残業せざるを得ないとして残業手当を支払わされるというのでは、なんだか納得できませんよね。
 そこで、ここでは、『年休で休んだことが原因で残業することとなった従業員に、残業手当を支払う必要があるか否か』についてお伝え致します。

 ご存知のとおり、労働基準法は、1日8時間または1週40時間を超えて労働させた場合を(法定)時間外労働と位置づけ、通常の賃金の1.25倍の割増賃金(時間外勤務手当)を支払わなければならないとしています。(労働基準法第32条・第37条)
 しかし、この法定労働時間は、実際に労務に従事した時間をいうのであり、年休を取得して休んだ日については労働していませんので、労働時間としてカウントする必要はありません。つまり、年休で休んだ日の労働時間は、労働時間としてはゼロ時間ということになります。
 となれば、年休で休んだことにより、業務に遅れが生じ、公休日に出勤したとしても、1週の労働時間の合計が40時間を超えないという場合もあるのではないでしょうか?
 このように、1週の労働時間の合計が40時間を超えていなければ(たとえば以下の例1のように)、公休日である土曜日に出勤したとしても、割増賃金(1.25)の支払い義務は生じません。
 なぜなら、年休で休んだ日については、時間外勤務時間の計算上、出勤したものとみなして取り扱わなければならないとする条文はどこにも存在しないからです。
  ≪例1≫・・・土日が公休日の場合 
        月   火 水 木 金 (土) (日)  合計
勤務時間   8 8年休  8  8  8  公休  40

 しかし、年休で休んでいても、通常の出勤日に時間外勤務をしていたりして、1週の労働時間の合計が40時間を超えている(たとえば以下の例2のような)場合があります。このような場合には、当該超過時間(2時間)分の割増賃金の支払義務が生じることになります。
 ≪例2≫・・・土日が公休日の場合
      月 火 水 木  金  (土)  (日) 合計
勤務時間  9 8 年休  8  9    8  公休  42

 年休は、あくまでも賃金の減収を伴うことなく労働を免除し、心身をリフレッシュさせ、疲労回復を図る制度であり、年休取得日に対して賃金がきちんと支払われていれば問題ありません。(=月給者または日給月給者の場合は欠勤控除の対象とされない、日給者または時間給者の場合は1日働いたときの給与が支給される。)
 これに対し、割増賃金の支払義務は、前述の法定労働時間を超える過重な労働に対する従業員への補償の趣旨(事業主へのペナルティの趣旨もある)で課されているものです。
 疲労回復を図る趣旨である年休を取得し、現実に休めている日については、その日を出勤したものとしてみなして過重労働に対する補償の趣旨である割増賃金の基礎に入れる(=勤務時間としてカウントする)必要はないということです。

この記事を書いたプロ

社会保険労務士法人ジャスティス [ホームページ]

経営コンサルタント 高正樹

広島県呉市焼山中央1丁目1-10 TAKAMATSU BLD 203号 [地図]
TEL:0823-30-3012

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
高正樹

中小企業を存続させるための最新の労務管理ノウハウを提供(1/3)

 「大切な会社を守るためのサポーターとして、常に最新の労務管理ノウハウを提供します」。そう力強く話すのは呉市焼山中央「社会保険労務士法人ジャスティス」代表の高正樹さん。「ジャスティス行政書士事務所」と「ジャスティスソリューション」の代表も兼...

高正樹プロに相談してみよう!

中国新聞社 マイベストプロ

中小企業を存続させるための最新の労務管理ノウハウの提供

会社名 : 社会保険労務士法人ジャスティス
住所 : 広島県呉市焼山中央1丁目1-10 TAKAMATSU BLD 203号 [地図]
TEL : 0823-30-3012

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

0823-30-3012

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

高正樹(たかまさき)

社会保険労務士法人ジャスティス

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
退職の申し出は、退職日の3ヶ月前までにしなければならないとする就業規則の規定は有効か?

貴社では、従業員が自己都合で退職しようとする場合には退職日の何日前までに会社に申し出なければならないこと...

[ 就業規則等 ]

マイカー通勤者等から申告された通勤距離の妥当性検証方法

 従業員の通勤に要する費用の全部又は一部を補填するための通勤手当、貴社でも支給されているのではないでしょう...

[ 賃金 ]

ご存知でしたか? 「65歳超雇用推進助成金」

 就業規則等で65歳以上への定年の引上げや、希望者全員を66歳以上まで継続雇用する制度の導入等を行った会社...

[ 助成金 ]

従業員代表の定義は?

 就業規則等の作成や変更について”意見書”に意見を記載したり、36協定をはじめとする各種の”労使協定書”に従業...

[ 就業規則等 ]

マスクを外さない従業員への対応

 最近、マスクを着けたまま業務に従事している人を見かけることがあります。特に接客される際に、意味もなくマス...

[ 労務管理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ