コラム

 公開日: 2016-09-23 

行方不明のまま長期に欠勤している社員を解雇できる?

 行方不明の社員を解雇したい場合、解雇手続きを進めるためには、この社員に対して解雇の意思表示をしなければなりません。しかし、行方不明ですので、意思表示ができるかという点が一番の問題となります。
 そこで、行方不明の社員に対して解雇の意思表示をするためには、裁判所で「公示」による意思表示という手続きを取る必要があります。
 また、就業規則で、『無許可欠勤が長期間続いた場合は退職扱いとする』旨を定めておくことも有益です。なお、ここでポイントとなるのは、”無断欠勤”という要件は使わないことです。
 なぜなら、メールや電話などで一方的に欠勤する旨を連絡していれば、連絡しているのだから”無断”の欠勤には当たらないという主張ができるようになるからです。ところが、”無許可欠勤”という要件にしておけば、一方的に欠勤する旨の連絡はしていても、上司が欠勤の理由などを聞き、当該欠勤を許可していなかったにも関わらず、それでも強行に欠勤したのであれば、”無許可欠勤”として前述の就業規則の規定にもとづき退職とすることができるからです。

≪行方不明者に対する解雇の意思表示≫ 
 携帯に電話しても、自宅へ行っても連絡が取れず、身元保証人に連絡しても本人の居場所が分からないといった状態が続いた場合、通常は就業規則に定める普通解雇事由に該当するものと思われます。
 事情を考えれば、この場合の解雇が解雇権濫用でないと認められる可能性は高いでしょう。しかし、ここで問題となるのは、会社が何をすればこの労働者を解雇したことになるか、という点です。
 というのも、解雇は、解雇するという会社の意思を表示する「意思表示」ですから、相手方である労働者に到達しなければ意思表示として効力を生じないからです。
 ですから、本人がいない以上、会社として解雇の意思表示を有効に行う(意思表示の効力を発生させる)ため、いかなる手続きを取る必要があるのかがポイントになります。

≪民法による意思表示≫
 民法には「公示による意思表示」という方法があります。その労働者の最後の住所地である簡易裁判所に申立てを行い、その裁判所が裁判所の掲示場に掲示し、かつ、掲示があったことを官報に掲載することで、最後に官報に掲載した日付から2週間を経過した日に、相手方に意思表示が到達したものとみなされます。
 しかし、この手続には、費用も時間もかかりますし、その労働者が行方不明であることを裁判所に対し疎明する必要があるなど、会社にとっては大きな負担となります。
 なお、法的には、解雇の意思表示はあくまで本人に対しなされる必要がありますから、失踪した労働者の家族等に対して解雇の意思表示を行ったとしても、法的には効力は生じませんので注意が必要です。

≪退職事由≫
 就業規則の退職事由として、『従業員が行方不明または音信不通の状態になって無許可欠勤を続けたまま●日を経過したとき』と規定する例がみられます(例えば、「従業員が無許可欠勤し、14日を経過したときは自然退職とする」という規定など)。
 無許可欠勤が続くということは、労働契約にもとづき労務を提供する意思がないものと解釈してもやむを得ない場合だと考えられますし、特別の事情に対応するための規定であって、会社側に解雇規制の潜脱を図る意図があるとも考えにくいですから、このような就業規則の規定は合理的な労働条件であり、基本的に労働契約の内容になると解されます。
 ですから、上記の公示による解雇の意思表示を行うことは、会社にとって負担も小さくないことからすると、実務上は、就業規則の退職事由を整備しておくことが有益と言えます。

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