コラム

 公開日: 2016-10-05 

土曜出勤や出張・研修の時間は時間外労働か

 業務の都合で休日である土曜日に出勤させたり、出張に行かせたり、研修に参加させたりした場合、その時間は割増賃金を支払わなければならない「時間外労働」に当たるのでしょうか? ここでは、それぞれについて解説したいと思います。

(1) 土曜出勤 
 労働基準法は、休日について、原則として毎週少なくとも1日の休日を与えることを義務づけています。しかし、4週間を通じて4日以上の休日を与える場合には、毎週1日の休日を与えなくてもいいとも定めています。(労働基準法第35条)
 つまり、4週を通じて4日以上の休日(法定休日)が与えられていれば、土曜日や祝日などに働かせても“労働基準法上の休日労働”には該当しないわけです。
 よって、たとえば毎週土日が休みの週休2日制を採用している会社の場合、休日である土曜日に勤務させたとしても、日曜日に休ませていれば、それは労働基準法上の休日労働にはならず、休日労働にかかる割増賃金(135%)の支払い義務は生じないのです。
 ただ、休日である土曜日に勤務させたことによって、その週の労働時間が40時間(←年次有給休暇を取得して休んだ日がある場合、その日については実際に働いていませんので、労働時間のカウントには含めません。)を超えてしまった場合には、労働時間が40時間を超えた時間について、時間外労働にかかる割増賃金(125%)の支払い義務は生じます。

(2) 出張 
 出張は、会社の事業場外で業務に従事するものであり、使用者が実際の労働時間を確認することは難しいのが通常です。このような場合、労働基準法では、所定(≠法定)労働時間労働したものとみなすと定めています。(労働基準法第38条の2第1項)
 出張時の往復の移動時間が労働時間に当たるか否かについては、裁判例(日本工業検査事件、S49.1.26横浜地裁判決)では、『出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがってまた時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である。』と判示しています。
 この裁判例からも分かるとおり、出張時の移動時間中、特に具体的な業務が命じられておらず、労働者が自由に活動できる(飲食をしていてもいい、読書をしていてもいい、寝ていてもいい等の)状態にあれば、労働時間とはならないと解するのが一般的です。
 ただし、出張の目的が物品の運搬自体であるとか、物品の監視等について特別の指示がなされている場合には、使用者の指揮監督下にあると言えることから、労働時間に該当すると判断されます。
 では、出張の日程の中に休日がある場合や、移動日が休日である場合はどうか。
 まず、出張中に休日がある場合、その休日に業務を処理することを明示的にも黙示的にも指示していなければ、その休日はそのまま休日として取り扱われます。行政通達(昭23.3.17 基発461号、昭33.2.13 基発90号)でも「出張中の休日は、その日に旅行する等の場合であっても、旅行中に物品の監視等別段の指示がある場合の外は、休日労働として取り扱わなくても差し支えない。」と示されています。

(3) 研修 
 研修は、通常の労務の提供とは異なります。しかし、それを理由に一概に労働時間ではないとするのは危険過ぎます。
 使用者が実施する教育研修について、行政通達(昭26.1.20 基収2875号、平11.3.31 基発168号)では、「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がなく、自由参加のものであれば、時間外労働にはならない。」と示しています。
 これは、逆に言えば、研修に参加しない労働者に対しては何らかの不利益が課されるような場合には、その研修は業務の性質が極めて高くなることから、労働時間に該当することとなり、研修を休日や始業時刻前・終業時刻後に行うのであれば、割増賃金の支払い義務が生じると言えます。
 始業時刻前や終業時刻後の研修が労働時間に当たるか否かがよく問題となる業種として、“理美容業”や“飲食業”などがあります。これらの業種では、労働者が自らの技量を磨くため、始業時刻前や終業時刻後に実技に関する練習を行うことが多いものです。
 会社としては、この練習が会社の指示により行わせたものであると認定されてしまうと、多額の残業代を支払わされるハメになります。このリスクを低減させるには、会社は以下の3つの対策を講じておくといいでしょう。
 対策1) 始業時刻前・終業時刻後の練習時間の定義を就業規則に明確化し、練習は会社が指示した労働ではないので、賃金の支払い対象にはならない旨を明記しておく。
 対策2) 始業時刻前・終業時刻後の店舗(施設)の使用は禁止する旨の原則を定め、練習希望者は、店舗(施設)の使用許可申請を所定様式により毎月申請しなければ練習ができないような仕組みを徹底する。
 対策3) 店舗(施設)の使用許可を得て練習をする者からは、店舗(施設)使用にかかる経費負担として、月額数千円程度の「使用料」を徴収するようにし、使用料は給与から控除するのではなく、その都度現金で支払わせるようにする。
そのうえで、会社は、使用料の受領に際し領収書を発行する。
このときの領収書は、その控えが会社に残るよう、必ず複写式のものを使い、控えを会社で保管しておくこと。(徴収した使用料の一部を練習の指導者に「講師料」として支払っておくのも良い。)

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