コラム

 公開日: 2016-10-03 

社有車で事故を起こした従業員に修理代を弁償させることができるか?

 事故により実際に会社が被った損害(修理代)を従業員本人に請求することは可能です。しかしながら、過去の最高裁の判例などからも、その全額を負担させることはできないと言えます。

 会社は従業員の労働力を通じて事業活動を営み、利益を上げています。事業活動の中で、従業員は、会社の指揮命令にもとづき会社のために社有車の運転を行っています。
 それを前提に考えると、たとえ事故が従業員の不注意によるものであったとしても、事故の責任のすべてを従業員に課し、損害額の全額を従業員に負担させることは公平ではないというのが裁判所の考え方だからです。(当然、従業員が故意に事故を発生させたり、重大な過失があったような場合には、損害額の全額を負担させることも認められることもあるでしょう。)

 このような場合、いくらまで従業員に賠償させることができるかについては、法令での明確な基準はありません。しかし、参考になるものとして、茨城石炭商事事件(S51.7.8最高裁第一小法廷判決)があります。
 これは、タンクローリー運転中に者間距離不保持および前方不注意等の過失による追突事故により会社に損害を与えた事件による訴訟で、最高裁は、「相当な過失がある場合であっても、損害の公平な分担という見地から、信義則上相当と認められる限度において損害の賠償または求償の請求をするこができる」と判示しており、この事案では、従業員に対して、賠償および求償を請求できる範囲は、信義則上損害額の4分の1を限度とすべきであるとしています。
 この最高裁の判例からも分かるように、故意や重大な過失による事故でない限り、弁償させる額は損害額の4分の1程度までに抑えておくことが無難だと言えます。

 会社によっては、「事故を起こしたら〇〇万円(一定額)を負担させる」というルールを設けている会社もあるようですが、このような取扱いは労働基準法第16条(賠償予定の禁止)に違反することとなり、同法第119条により6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。よって、このようなルールは早急に是正しておく必要があります。

 社有車の事故が多い会社では、事故を減らすためにはどのような対策が効果的なのか頭を抱えるところですが、まずは弁償には前述のような制約があることに注意しながらルールを作っていくことが必要です。その中で、定期的な安全運転教育を実施しながら従業員の安全運転意識の高揚を図ることはもちろん、事故が多い従業員については、一定期間、社有車の運転を禁止したり、昇給や賞与の査定時にマイナス考課をすることとし、その旨を関連規程に明記し周知しておくことが必要です。

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