コラム

 公開日: 2011-04-13 

死刑と終身刑について


現在の刑法は死刑という制度を設けています。
これに対して、死刑を廃止すべきと主張している人たちもいます。
死刑廃止論者の取りあえずの主張は、判決が確定した死刑囚の執行を停止することです。

新しい法務大臣が就任すると、必ずこの死刑執行の書類にサインするかどうかをマスコミが取り上げます。
しかし、私はいつも不思議に思うのです。
法治国家の日本で、判決が確定した死刑囚の刑の執行を延期するという主張がなぜ正当性を持つのか?

まあ、このあたりは、見解の相違ということでやむを得ないかと思っています。
しかし、死刑廃止論者の主張の中で、私がもう少しキチンと実証研究をした方がよいと思うのが「終身刑」の主張です。

死刑を廃止する代わりに終身刑(仮釈放無し)を設けるべきという主張があります。
私も一時この意味の終身刑が望ましいと考えたことがあるのです。
広島弁護士会の司法制度調査会で、死刑制度についてシンポジウムを行うために終身刑について調査したことがあります。

その時、法務省が終身刑について調査研究した報告書を読む機会がありました。
日本の無期懲役囚が仮釈放される平均期間、また、外国(特に、アメリカ)の終身刑の実態を詳細に調査したレポートです。
確か、当時は秘密事項になっていたと思いますが、死刑論の調査研究のためということで特別に開示されたと記憶しています。

そのレポートを読んで、終身刑についての私の考えは変わりました。
アメリカでは、単純に刑期を足してくシステムになっている州もあります。
そこで、懲役100年以上の刑期が言い渡されたりすることもあるわけです。
このような場合、結局どういう処遇をするのか不思議でした。

法務省の調査報告を読んでビックリしたのですが、実際には死ぬ前にほとんど釈放していると書いてあったのです。
理由は簡単です。
長期の懲役刑の場合、死ぬまでにほとんど精神に異常を来すことから、拘禁目的を達することが出来なくなると言うのです。

そうすると、日本で(仮釈無しの)終身刑を設けても、同じ問題が生じるはずです。
人間は、未来に対し全く希望がもてない状況では生きていけないようなのです。
法務省の調査報告書が正しければ、(仮釈無しの)終身刑は、囚人を発狂させるシステムということになります。

そうすると、死刑と終身刑とでどちらが酷い刑罰か判断に迷うと思うのです。
大切なのは、何が何でも死刑はいけないというイデオロギーではなく、冷静でキチンとした実証研究だと思います。
日本の議論が少しイデオロギーに傾き過ぎていると感じるのは、私だけではないはずです。

いずれにしても、死刑制度に代えてえて、この(仮釈無しの)終身刑を設けるかどうかは、もっと慎重に議論する必要がありそうです。

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