コラム

 公開日: 2015-09-18  最終更新日: 2015-12-11

弁護士コラムvol.108 「証明責任(立証責任)とは」 副所長 田中伸

山下江法律事務所 弁護士 田中伸

証明責任(立証責任)とは

 民事裁判には,「証明責任(立証責任)」という概念があります。
 民事訴訟法の文献には,証明責任とは「訴訟において裁判所がある事実(主要事実)の存否につき,そのいずれとも確定できない場合(真偽不明)に,その結果として,判決において,その事実を要件とする自己に有利な法律効果の発生または不発生が認められないことになる当事者の一方の危険または不利益」であると書かれています(中野貞一郎・松浦馨・鈴木正裕編「新民事訴訟法講義」(有斐閣)298頁)。
 これでは少し分かりにくいかと思いますので,誤解を恐れず簡単に言うと,証明責任とは,民事裁判において,自己に有利な事実を証明できなければ,敗訴するなど自分に不利益な結果となってしまうリスクのことです。
 具体例を挙げて,説明してみます。

【事例】
 Aさんは,Bさんに対して,100万円を貸し付けました。
 しかし,Bさんがなかなか返済してくれないので,困ったAさんは,Bさんに対して,民事裁判(貸金100万円の返還請求訴訟)を提起して,解決を図ることにしました。

 この場合,Aさんは,「Bさんに100万円を貸し付けた(返済する約束をした上でBさんに100万円を渡した)」という事実(以下「事実①」といいます)について,証明責任を負っています。
 したがって,仮にAさんが事実①を証明できなかった場合,この裁判においては,AさんのBさんに対する100万円の貸し付けはなかったものと扱われて,Aさん敗訴(貸金100万円の返還請求は認められない)という結果になってしまうのです。

 他方,Bさんとしては,事実①とは反対の「Aさんから100万円を借り入れていない」という事実を証明する必要はなく,事実①について「どちらか分からない」という真偽不明の状態に持ち込めれば,Aさんの貸金返還請求を排斥することができるのです。

 このように,ある事実について証明責任を負っている者は,その事実についてきちんと証明できないと敗訴等の不利益を被ることになりますので,その裏付けとなる証拠の有無が重要になってくるのです。
 したがって,証明責任のことを考えると,口約束ではなく,借用証等の契約書類もきちんと作成・保管しておくべきです。

 裁判での事実の証明(立証)についてお困りのことがありましたら,当事務所にご相談ください。


 執筆者:山下江法律事務所 副所長・弁護士 田中伸 (広島弁護士会所属)

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