コラム

2015-08-07

弁護士コラムvol.105 「債権を時効にかけないためには」 新名内沙織

山下江法律事務所 弁護士 新名内沙織

債権を時効にかけないためには

1 時効とは何か
 まず,時効とはどういう制度なのかについて,簡単にご説明します。
 時効とは,ある事実状態が一定期間継続した場合に,この事実状態に従った権利関係を認める制度です。時効には①権利者としての事実状態が一定期間継続した場合に権利の取得を認める取得時効と,②権利を行使しない状態が一定期間継続したときに権利の消滅を認める消滅時効の2種類があります。
 今回は,消滅時効について少しご説明したいと思います。
 消滅時効とは,例えば,ある人に期限を決めてお金を貸したけれども,払って貰えないまま特に請求もせず10年間放置しており,その後になって貸主が借主にお金を返して欲しいと請求した際に,相手方から時効になっているので払わないと主張されると,もはや貸主のお金の返還を請求できる権利は失われてしまう,というものです(なお,時効は,単に決められた期間が経過すれば当然に効果が発生するというものではなく,時効が完成したことで利益を受ける人が時効を主張して初めて時効の効果が認められます。これを「時効の援用」といいます。)。
 どうして,このような制度が認められているかについては,①いつでも権利を行使して自分の権利を守ることが出来たのに,長期間にわたってそれを怠った以上,権利を失ってもやむを得ない,②時間が長く経過してしまうと,事実関係に関する証拠が失われてしまう可能性が高い(例えば,お金を借りた後にもう支払いも終わると,その後長期間にわたって返済の証拠となる領収書等を保管しておくことを期待するのは酷だからです。)などが理由として説明されることが多いです。

2 時効期間
 どの程度時間が経過すると、権利が消滅してしまうのかについては,権利の種類毎に決められた時効期間があります。一般的には10年ですが,例えば不法行為による損害賠償請求権は3年で時効になってしまいます。自分の権利を守るためには,自分の権利が何年で時効になってしまうのか,注意しておく必要があります。

3 時効の中断
 次に,自分の権利が消滅時効にかからないようにするためにはどうしたら良いかについてご説明します。
 時効期間は,債権者が権利を行使できる段階になったときから進行しますが(例えば,期限を決めてお金を貸したときは,その期限が過ぎるまでは借主に対して返すようには言えませんが,返済期限を過ぎれば返すように請求できるようになりますので,この時から時効期間がスタートします。),途中で「時効の中断」が認められると,その時に時効期間がいったんリセットされて,もう一度その時点から時効期間がカウントされることになります。
 この「時効の中断」が認められる場合は以下の3つです。
① 請求(ただし,裁判所が関与する正式な手続きの中で請求することが必要で,後から取り下げ等を行って権利が確定されないまま手続きが終了した場合は中断の効果が認められません。また,裁判外の手続きによる単なる催告の場合は,催告から6ヶ月以内に裁判所の関与する手続きを執らなければ時効の中断の効果が発生しません。)
② 差押え・仮差押え・仮処分
③ 承認(債務者が債務を負っている事を認めたり,明示的に認めなくても債務の存在を前提とする行為をしたりした場合を指します。)
 自分の権利を時効で失ってしまわないために,時効を中断する一番簡易な方法は,③の債務者の承認をとることです。例えば,借金の一部を返済してもらえれば,通常貸金債権全体について時効の中断の効果が発生します。その他にも,債務がある事を認める旨を書面に一筆書いて貰うという方法も考えられます。
 ただし,債務者が非協力的な場合は債務の承認を取ることは難しいので,時効期間が経過してしまう前に,①や②の裁判所が関与する手続きで請求しなければなりません。

4 時効期間が経過してしまったら
 時効期間が経過してしまうと,債務者の方から時効を援用されてしまうので,基本的には権利が消滅してしまいます。
 但し,債務者が時効期間が経過していることに気づかずに,債務があることを前提とした行為(これを自認行為といいます。)をした場合には,信義則上時効を援用できなくなるため,債権者としては債務の履行を請求できるようになります。債権者としては,時効期間が経過してしまっていても,債務者に自認行為がなかったか十分検討する必要があります。

5 最後に
 以上簡単に時効の制度をご説明しましたが,他にも問題となる事項もありますので,時効について悩まれた場合には,一度弁護士にご相談いただければと思います。


 執筆者:山下江法律事務所 弁護士 新名内 沙織 (広島弁護士会所属)

弁護士・新名内 沙織のプロフィール

■山下江法律事務所「Q&A」 

■弁護士コラムバックナンバー【テーマ:いろいろ】
・vol.101 「マイナンバー制度ってなんだろう」 城昌志  2015/6/12
・vol.97 「土地管轄~どこの裁判所に訴訟提起できるのか~」 山口卓  2015/4/17
・vol.84 「友人に貸したお金を返してもらいたい!!」 齋村美由紀  2014/11/14
・vol.84 「知らないと危ないかも?!身元保証について」 笠原輔  2014/10/17
・vol.82 「お隣さんとのトラブル」稲垣 洋之 2014/9/19
・vol.81 「パワハラとは?」柴橋 修 2014/9/5
・vol.77 「ご近所との騒音トラブル」榎本 紀子 2014/7/4
・vol.76 「契約って何ですか?」粟井良祐 2014/6/20
・vol.62 「オークションで購入したチケットが使えなかったのですが・・・粟井良祐 2013/11/22
・vol.61続編 「続・NHK受信料と契約自由の原則」松浦亮介 2013/11/8
・vol.61 「NHK受信料と契約自由の原則」松浦亮介 2013/10/25
・vol.56 「レンタルDVDの延滞料を請求された・・・!」笠原 輔 2013.8.16
・vol.49 「未成年の子どもが勝手にした契約を親が取り消すことができるか榎本紀子 2013.5.10
・vol.47 「消滅時効に関する留意点」松浦亮介 2013.4.5
・vol.45 「保証人になってください」城昌志 2013.3.8
・vol.44 『「最も良い解決法」とは?』上土井幸始 2013.2.22
・vol.42 「エステを解約したいのですが・・」齋村美由紀 2013.1.25
・vol.40 「管轄」加藤泰 2012.12.21
・vol.37 「仮差押命令」稲垣洋之 2012.11.9
・vol.36 「裁判に勝てば当然支払いをしてもらえるか?」 柴橋修 2012.10.26
・vol.34 「親を扶養する義務」 久井春樹 2012.9.28
・vol.31 「殴られて怪我をした場合に損害賠償請求できる根拠は?」 粟井良祐  2012.8.17
・vol.29 「ファールボールが直撃してけがをしてしまった場合の球団主催者蔦尾健太郎 2012/7/20
・vol.25 「婚約破棄による損害賠償請求」 齋村美由紀 2012.5.25
・vol.22 「もしも普段使っている製品で事故に遭ったら」 片島由賀 2012.4.13
・vol.20 「指導者の不注意で、スポーツ中に事故に遭ったら・・・」 笠原輔 2012.3.16
・vol.18 「即時取得制度」 稲垣洋之 2012.2.17
・vol.17 「クーリング・オフについて」 柴橋修 2012.2.3
・vol.15 「成人になるとは?」 松浦亮介 2012.1.6
・vol.10 「ペットのトラブル」 山本淳哲 2011.10.21
・vol.5 「インターネット上で名誉を毀損されたら・・・」 笠原輔 2011.8.12

弁護士コラム一覧

この記事を書いたプロ

山下江法律事務所 [ホームページ]

弁護士 山下江

広島県広島市中区上八丁堀4-27 上八丁堀ビル703 [地図]
TEL:0120-7834-09

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
お客様の声

交通事故の解決事例をマンガで紹介しています山下江法律事務所 交通事故専門サイトトップページ ↓↓↓http://www.hiroshima-jiko.com/■その他の事例もご参照くだ...

相談料

無料相談について、詳しくはこちら↓をご覧下さい。■交通事故専門サイト■借金問題専門サイト相談予約専用フリーダイヤル0120-783409 (なやみよま...

 
このプロの紹介記事
山下江 やましたこう

依頼者に笑顔になってもらうために、全力を尽くします。(1/3)

 ドアを開けると、ずらりとスタッフの並ぶカウンター。案内された部屋で待っていたのは穏やかに微笑む山下江さん。まるで大病院の受付みたいですねと感想を伝えると、「そうですか? ハハハハ」と楽しげに笑う山下さん。山下江事務所は、弁護士15人・秘...

山下江プロに相談してみよう!

中国新聞社 マイベストプロ

「親切な相談」「適切な解決」これが私たちのモットーです。

事務所名 : 山下江法律事務所
住所 : 広島県広島市中区上八丁堀4-27 上八丁堀ビル703 [地図]
TEL : 0120-7834-09

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

0120-7834-09

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

山下江(やましたこう)

山下江法律事務所

アクセスマップ

プロのおすすめコラム
広島の弁護士・江さんの「10月22日(土)三本松進先輩が最新ベンチャーを語る・・・」ほか
イメージ

 10月22日(土)三本松進先輩が最新ベンチャーを語る(第31回KKC交流会)  修道中高及び東大の2年先輩であり...

[ ブログ ]

広島の弁護士・江さんのお知らせ「保険代理店様向け相続セミナー開催」
イメージ

 山下江法律事務所は、保険代理店様向けの相続セミナーを開催します。 近時、相続に注目が集まっています。保...

[ お知らせ ]

広島の弁護士・江さんの何でも法律相談「子の親権を取れますか?」
イメージ

2016/9/19(月)13:30~FMちゅーピー(76.6MHz)「なやみよまるく~江さんの何でも法律相談」での、OA内容をお届...

[ 法律相談 ]

弁護士コラムvol.133 「いわゆるマルチ商法に関与してしまった場合」 新名内 沙織
イメージ

 いわゆるマルチ商法に関与してしまった場合  いわゆる「マルチ商法」や「ネットワークビジネス」に関与し...

[ 弁護士コラム ]

広島の弁護士・江さんの「砂浴に挑戦 」ほか
イメージ

 砂浴に挑戦  先の土曜日(9月10日)、砂浴という健康法があるというので、知人が持っている東広島市安芸津の...

[ ブログ ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ