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コラム
公開日: 2015-04-07 最終更新日: 2015-04-08
広島の弁護士・江さんの何でも法律相談「セクハラ最高裁判決について」
2015/4/6(月)15:30頃~FMちゅーピー(76.6MHz)
「なやみよまるく~江さんの何でも法律相談」での、
OA内容をお届けします。(※内容を要約しております)
今回のテーマは、
「セクハラ最高裁判決について」
■セクハラ最高裁判決について
Q: 今月は、「企業法務」をテーマに、みなさまから番組に寄せられました手紙やメールによるご相談に、法律の専門家であるお立場からお答えをいただきます。
江さん、今日も、よろしくお願いします。
A: はい、よろしくお願いします。
Q: 今日は、58歳男性からのご相談です。
「私は従業員50名程度のIT関係の会社を20年以上経営しています。
従業員は男性が多いのですが、女性も十数名おります。
女性従業員から管理職によるセクハラの相談を受けたこともあり、セクハラについては関心をもっておりました。
先の2月でしたか、大阪市にある水族館「海遊館」におけるセクハラ事件について、最高裁の判決が出たことが中国新聞に出てました。
セクハラをした管理職に対して会社が行った懲戒処分が問題なかったような判決だったように思いますが、もう少し詳しく知りたいのですが・・」
というご質問です。
江さん、従業員へのセクハラについての経営者からのご質問のようですね。
私も新聞で見たような気もするのですが、どのような事件だったのでしょうか。
A: まず、事件の概略を説明しましょう。
海遊館に勤務する課長代理の職にあった2人が、女子従業員Aに対して、約1年余にわたって、Aに対し、他人の性生活の話しや自分の性器の話しをしたり、「俺の性欲は年々増すねん」「今日のお母さんよかったわ・・・。かがんで中見えたんラッキー」などと話したり、「30歳は22、3歳の子から見たら、おばさんやで。」「(給料が足りないから)夜の仕事とかせえへんのか。」など話したというものです。
しかも、これらの多くが、Aが一人で部屋で仕事しているときになされたという。
Q: ずいぶんひどいことを言うもんですね。
A: はい、ぼくもそう思います。
Q: それで、裁判はどういうものだったのですか。
A: 会社は、この課長代理の2人(これからは「管理職ら」といいます)に対し、それぞれ出勤停止30日、出勤停止10日の懲戒処分としました。
この会社の処分に対して、管理職らが、こうした懲戒処分は無効だ、懲戒処分に伴って減額された賃金を支払えなどとして、裁判を起こしたわけです。
Q: で、裁判の結果はどうなったのでしょうか。
A: 大阪地裁の第1審では、請求却下、すなわち、管理職らの訴えを認めず、会社の処分は正当としました。
ところが、大阪高裁の第2審は、次の2つの理由で管理職らの訴えを認めました。
すなわち会社の懲戒処分は無効としたわけです。
Q: 大阪高裁が処分を無効と判断した理由は何だったんですか。
A: はい、次の2つの理由があったようです。
①Aが明確な拒否の姿勢を示さなかったので、管理職らはAから許されていると誤信していた。
②処分の前の事前警告や注意がなかったから、懲戒解雇の次に重い出勤停止処分は酷に過ぎ、処分は権利濫用とのことでした。
要するに、会社が規定している就業規則違反にはなるが、事前に注意をせず突然処分したのは、権利の濫用であり許されないと判断したのです。
Q: なるほど、会社の権利の濫用なのですね。
で、この高等裁判所の判断に対して、最高裁はどのように判断したのですか。
A: 最高裁は、
①(管理職らがAに許されていると誤信した点)については、被害者は不快感や嫌悪感を持ちながらも、職場の人間関係悪化を懸念して抗議しにくいものだし、②(事前に注意や警告がなかった点)については、加害者は管理職であり会社のセクハラ方針や同研修などの取組を当然に認識すべきであったこと、多くが第三者のいない状況において行われていたので警告等を行う機会がなかったなどとして、管理職らに有利にしんしゃくし得る事情があるとは言えない。企業秩序や職場規律に看過し難い有害な影響を与えたので、処分は懲戒権の濫用には当たらないと判示したのです。
Q: 要するに、会社による管理職らに対する処分は妥当と判断したのですか?
A: はい、そういうことです。
Q: 会社側からすると、1審では勝ち、2審では負け、最高裁では勝ちというように、裁判所の判断が二転三転したことになりますが、このようなことは良くあることなのでしょうか。
A: よくあるとは言えないと思いますが、こうした判断の違いが出てくることは、時々あります。
今回判断が二転三転したのは、おそらく価値観の違いでしょうかね。
裁判官と言えど人間です。
同じ事情であってもそれを正当とするか違法とするか微妙な価値判断が介在するわけです。
Q: すると、最高裁は、今回の判断ではセクハラに対しては厳しい判断をしたということですね。
A: はい、そういうことです。
正確には、管理職のセクハラに対しては通常の従業員のセクハラとは異なり、より厳しい判断をすることを示したと言えると思います。
ちなみに、セクハラ行為には、性的な要求が受け入れられない場合に不利益を課す「対価型」と職場の就業環境を害する「環境型」がありますが、今回のセクハラは後者に該当します。
この場合一般的には高裁判決がいうように、懲戒処分は、注意や警告などを経ても言動が是正されない場合に認められるものです。
しかし本件では、会社がセクハラ研修をしっかりやっており、その中で他の従業員に対して指導的立場にあった管理職がセクハラを行ったということで、加害者(管理職ら)にとっては厳しい判断となったものと思われます。
Q: よく分かりました。
会社を経営されている方に何か助言はありますか。
A: はい、今回は会社がキチンとセクハラ研修会を行っており、それにも関わらず、指導的立場の者がセクハラを行ったと言うことで会社の処分を正当と判断しました。
会社としては、従業員に対するセクハラ研修をキチンと行うようにすべきです。
そして、セクハラを受けた従業員が相談できる窓口をキチンと作っておく必要があると思います。
セクハラ事件が起こると、職場での働く意欲が落ちてしまい、セクハラの加害者と被害者、そして会社と加害者の間や会社と被害者との間でのトラブルにもなる可能性があります。
セクハラが起こらず、従業員みなが楽しく働ける職場を作ることが会社を成長発展させることにつながることを肝に銘じるべきです。
Q: そうですよね。
私もそのように思います。
今日は、この2月に出された最高裁セクハラ判決について、江さんに聞きました。
企業法務やセクハラでお悩みの方は、地元広島の山下江法律事務所に、まずはお電話されてみてはいかがでしょうか?
フリーダイヤルをお伝えしておきます。
山下江法律事務所フリーダイヤルは0120-7834-09 0120-7834-09
この番組名と同じ「なやみよまるく」と覚えてください。
江さん、今日はありがとうございました。
■次回のテーマ
「従業員のメンタル面への会社の責任」について
2015/4/13 15:30頃~ FMちゅーピー(76.6MHz)
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