コラム

2014-06-06

弁護士コラムvol.75 「自転車事故における損害の填補」 松浦 亮介

広島 山下江法律事務所
山下江法律事務所 弁護士 松浦亮介
 小学生の息子が自転車に乗っていたところ,不注意で,歩行者Aに衝突し重篤なけがを負わせてしまった・・・・・・,神戸地方裁判所平成25年7月4日判決は,このような事案で,監督責任(民法714条)に基づき小学生の親Pに約1億円の損害賠償義務を認めました。
 このような事案では,Pがよほどの資産家でない限り,P自らが1億円の賠償義務を果たすのは無理でしょう。自転車事故ということを考えると,Aが損害を填補できたかどうか,心配になります。
 今回は,自転車が加害者になった交通事故の損害填補について取り上げたいと思います。以下では,便宜上,Aを被害者,Pを自転車側(加害者・賠償責任者)としますが,現実の神戸地裁判決の事案とは関係ありません。

1 自動車事故の場合
 自動車事故の場合は,自動車事故による賠償責任に備えて保険に加入している人がほとんどでしょうから(強制加入の自賠責保険に加えて任意の自動車保険),通常,AはPの加入する保険会社から判決で認められた金額の全額を受けることができます。Pも損害賠償債務から解放されます。

2 自転車事故の場合
 他方,自転車に関しては,自賠責保険のような強制加入保険はありませんし,任意の自転車保険が売り出されてはいますが,まだまだ意識的に加入している人は少数派でしょう。自転車事故によって多額の損害が現実化したときに,その事故に適用される保険がない場合,AもPも,非常に困難な状況に陥ります。Aは裁判所に損害賠償を認めてもらったとしてもPに十分な資産がなければ金銭として回収することができません(その結果,治療費負担や収入減少が現実に填補されず深刻な状況に陥るおそれがあります)。他方,Pは多額の債務を負ったままになります(破産も考えざるを得なくなるかもしれません)。
 このような不幸を避けるため,まずは,本当にその自転車事故に適用される保険がないかどうか,次の点を確認してみるべきです。
(1)被害者側の保険(傷害保険)
 Aは,自分や自分の家族が,傷害保険に加入していないか,自動車保険に人身傷害保険が付帯していないか等を確認すべきです。補償の対象は保険契約の内容や付けている特約の有無等で決まってくるので,一概には言えませんが,これらの中には,歩行中の自転車事故によるけがも補償の対象にしているものがあります。補償対象になっていれば,Pから賠償を受けるわけではありませんが,Aは自分の保険からの保険金によって,全額ではないにしても損害の一部を現実に填補することはできます。
 なお,この場合,Pは自分(又は自分の保険会社)が,Aに損害を賠償したわけではないので,賠償責任を免れることはできません。Aに替わりAの保険会社から,Aへ支払った保険金分の支払いを求められることになります。
(2)加害者側の保険(個人賠償責任保険)
 Pは,自分や自分の家族が,個人賠償責任保険に加入していないかを確認すべきです。個人賠償責任保険は,賠償責任を負った場合に保険会社が代わりにその賠償責任を果たしてくれるもので,自動車保険や火災保険,傷害保険などの特約として加入している場合もあります。また,誰の賠償責任を保険対象にしているか,どういう事故を対象としているか(通常,業務で自転車に乗っていた場合などは対象としていません),保険が負担してくれる限度額がいくらか,など確認すべき点はいくつかありますので注意が必要です。
 適用される保険があり,保険の限度額も十分であれば,Pは自分の保険によってAに対する賠償責任を果たすことができます。AもPの資力を心配する必要はなくなります。これは,先に1で述べた自動車事故の場合と同じ構図です。

 以上,自転車が加害者となった交通事故の場合の損害填補について簡単に述べました。自転車は,幅広い年代に共通する日常の足であり,事故に対する備えはおろそかになりがちですが,事故では損害が多額になることもあります(冒頭の神戸地裁判決のケースのように子どもが当事者になる場合も想定されます)。だれでも被害者にも加害者にもなり得るものですので,事故にあう前に,一度,加入している保険で備えができているか点検してみてください。
 それでも,もし,不幸にして,自転車事故の当事者となってしまった場合は,ひとりで悩まずに当事務所へご相談下さい。

 執筆者:山下江法律事務所 弁護士 松浦 亮介 (広島弁護士会所属)


弁護士・松浦亮介のプロフィール

■山下江法律事務所 交通事故相談専門サイト
 「賠償金額の基準に注意!」

■弁護士コラムバックナンバー【交通事故】
・vol.74 「交通事故の過失割合について」 蔦尾 健太郎 2014/5/23
・vol.64 「交通事故の損害賠償の算定について」新名内沙織  2013/12/20
・vol.63 「交通事故の損害賠償請求の相手方は?」榎本紀子  2013/12/6
・vol.11 「日常生活におけるトラブル(交通事故)」上土井幸始 2011/11/4
 

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