コラム

 公開日: 2013-07-05  最終更新日: 2014-07-04

弁護士コラムvol.53 「建物を人に貸すときに注意すること」 柴橋修

山下江法律事務所
山下江法律事務所 弁護士 柴橋修
 山下江法律事務所所属の弁護士の柴橋です。
 がんばって念願のマイホームを手に入れて喜んでいたのも束の間,タイミング悪く転勤の辞令を受けてしまった,という話がよくあります。
 住宅ローンを払いながら,新たに赴任先でもマンションなどを借りなければならず,経済的には大変です。そこで,このような場合,何年か後には戻って来ることができるのであれば,その期間だけ人に貸して賃料収入を得たいところです。
 ただ,このような建物の賃貸借は通常の賃貸借とは異なっている部分があるため,注意すべき点があります。今回はこの点についてお話ししたいと思います。
 後述する賃借権以外の一般的な賃貸借契約は,期間が定められている場合は存続期間が満了すれば終了します。ただ,合意があれば更新することもできます。
 ところが,建物を借りる場合,通常は借主にとってはその建物は生活の拠点になるため,借主の社会生活に大きく影響することになります。そのため,借地借家法という法律が定められており,この法律により建物の所有を目的とする土地の賃借権や建物の賃借権については強く保護されています。
 建物の賃貸借契約の存続期間についてみると,①法定更新があること(例えば,期間の定めがある賃貸借では,期間満了前1年から6ヶ月前までの間に更新をしない旨の通知をしなかったときは,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる)②賃貸人が解約するには正当事由の存在が必要とされる,などの点で賃借権が強く保護されています。
 そして,正当事由については,①賃貸人及び賃借人の双方の建物使用を必要とする事情②建物の賃貸借に関する従前の経過③建物の利用状況④建物の現況⑤賃貸人が財産上の給付(立ち退き料など)をする旨の申し出をした場合の申し出を考慮して判断されます。
 そうすると,期間満了後に賃借人が任意に建物を明け渡してくれない場合,この正当事由が認められない場合には,明け渡しが認められないことになります。また,正当事由が認められるとしても,裁判を起こさなければならなくなるなど,思いもよらぬ不利益を被るおそれもあります。
 以上のように,建物の賃貸借の場合,一旦貸してしまうとなかなか返してもらえない危険性もあることを認識しておく必要があると思います。
 そうすると,怖くて建物を貸す気にはなれないかもしれません。しかし,現在では建物賃貸借に関する上記の問題点を考慮し,契約の更新のない借家権(定期借家権)が新たに定められています。
 この定期借家権を利用すれば,解約に正当事由も不要であり,安心して建物を貸すことができるといえます。
 しかし,定期借家権を設定するには,公正証書等の書面によることが必要であったり,事前説明書の交付が義務づけられるなど,厳しく要件が定められていますので契約書を作成するときは注意する必要があります。
 このように建物の賃貸借契約など契約を結ぶ際にはそれぞれ注意すべき点があります。契約書の作成などについてお悩みのときはぜひ当事務所ご相談ください。

 執筆者:山下江法律事務所 弁護士 柴橋修 (広島弁護士会所属)

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