コラム

2013-03-22

弁護士コラムvol.46 「相続でトラブルになりやすいケースについて」 蔦尾健太郎

山下江法律事務所 弁護士 蔦尾健太郎
 被相続人が亡くなった際には,遺産をどのように分けるかについて,残された相続人間で協議を行う,あるいは協議がまとまらなけれな家庭裁判所での遺産分割の調停,審判の手続きの中で解決していくということは,これまでのマイベストプロで当事務所の弁護士が何度か説明したところです。
 相続の相談に来られる方の中でよくあるのが,一部の相続人が生前の被相続人名義の預貯金等を使い込んだのではないか等として,相続人間で争いが生じているケースです。
 例えば,父親が亡くなったので,遺産分割の話し合いを行う前提として父親名義の預貯金の残高を取り寄せてみると,把握していた預貯金より大幅に預貯金額が少なかったり,預貯金通帳の履歴に不明瞭な出金の記録が残っているといったケースです。
 両親が高齢になっていた場合には,子どもたちのうちの1人が事実上父親(あるいは母親)の日々の生活の面倒を看ていたりすること(例えば,父親の代わりに父親名義の預貯金の引き出しを行ったり日用品の購入を行ったりなど)はよくあることと思います。 
 このような場合に,父親が亡くなるまでの間,日常的に父親の自宅等に出入りしていた子どもの1人が勝手に父親の預貯金を使い込んだのではないかといった不信感が生じて兄弟間で揉めることが往々にしてあります。
 上記のようなケースでは,本当に使い込みをしていたのかについての証拠がほとんど存在せず,遺産分割の話し合いを当事者で行おうにも結局は相続人間での水掛け論になってしまいます。
 結果として,相続人間の話し合いでは解決せず,深刻な相続人間の対立を生んだ挙げ句に,遺産分割の調停や審判へと持ち込まれることになるケースがよくあります。
 しかし,家庭裁判所で行われる遺産分割の調停や審判では,相続人の使い込みがあったのかどうかについて本来審理してもらえるものではありません。
 被相続人がその生前,現金や不動産などの自己の財産を相続人のうちの1人へ贈与していたのかどうかが争われる場合であれば,そういった贈与があったことを踏まえて各相続人の相続分を決める必要があるため,いわゆる特別受益として家庭裁判所の調停,審判で審理されることになります。
 しかし生前贈与と異なり,相続人による使い込み等については,家庭裁判所では審理してもらえるわけではなく,相続人がこれを争うためには,一部の相続人に不法行為や不当利得があるとして,当該相続人を相手取って,別途民事訴訟を提起することが本来必要になります。
 ただ,被相続人名義の預貯金について通帳の履歴などから長年に渡って使途不明金があったとしても,それ以外には証拠が残されていないことが多く,実際に民事訴訟を提起しても本当に当該相続人が預貯金を不正に費消していたのかを立証することは極めて困難なことが多いです。
 このようなトラブルが起こりやすいのは,被相続人となる父親や母親が高齢になっていて,預貯金の引き出しや日々の買い物といった基本的な日常生活を1人でこなすだけの判断能力に欠ける状態が長く続いており,相続人の1人が父親や母親に代わってこれらの行為を事実上長年行ってきた場合です。
 高齢の両親を事実上監督している立場の側としては,適正に管理してきたにもかかわらず後から不明瞭な出金があったと言われて争われることのないようにしておく必要があります。
 他の相続人からしても,相続人の一部の者に,事実上の財産管理を任せっきりにしてしまうことは前述のような問題を招く危険がありますが,かといって父親や母親の面倒を看てくれている者に対してお金の管理のことをとやかく確認することも憚られると思います。
 上記のような場合には,判断能力の衰えた高齢者などの財産管理を適正に行うための後見制度の利用等も子どもたちとしては検討すべきであると思います。
 いずれにせよ,これらの問題については専門的な判断を要するため,一人で悩まずに事前に専門家に相談しておくことが望ましいといえます。
 思い当たることがあった場合には一度当事務所へ御相談いただければと思います。

 執筆者:山下江法律事務所 弁護士 蔦尾健太郎 (広島弁護士会所属)

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