コラム

 公開日: 2012-09-14  最終更新日: 2014-07-04

弁護士コラムvol.33 「破産手続きの流れについて」 新名内沙織

山下江法律事務所 弁護士 新名内沙織

 今回は,個人の場合の破産手続きについて概略を説明していきたいと思います。
 近年不景気が続き,「破産」という単語を耳にする機会も増えているように思います。しかし,破産が具体的にどのような制度なのかわからず,実際に破産する決断がなかなかできないという方もいらっしゃるのではないかと思います。
 そこで,破産とはどのような手続きなのか,どんなメリット・デメリットがあるのか,仮に破産することになった場合気をつけなければならないこと等について,説明していきたいと思います。

 1 破産手続きの概要
 「破産手続」とは,大まかに言うと,破産の時点で保有している財産をお金に換えて,債権者に配当する手続きを指します。
 しかし,個人の債務者の場合,配当にあてられる財産が残っていることは少なく,配当できずに残った多額の債権についてそのままになってしまうと,結局生活を立て直していくことができません。そのため,配当できずに残った債務をそれ以上支払わなくてもよいようにする手続きが用意されており,これを「免責手続」といいます。
 つまり,免責手続きが終了してはじめて債務が免責されたことになるのです。
破産に至った理由やその後の経過によっては,免責が認められないことがあるので,注意しなければなりなせん。破産すれば債務が全部帳消しになると誤解されている人もいますが,破産手続を取っても,免責が認められないと借金が残ってしまうことになるのです。
 では,どんな場合に免責が認められないのでしょうか。
 たとえば,ギャンブルや,高価な買い物を繰り返して浪費で多額の借金を背負ってしまった場合,免責が認められない可能性があります。他にも,わざと裁判所に対して嘘の説明をしたり,財産隠し等をしていた場合にも免責が認められなくなる可能性があります。
 また,そもそも免責の対象とならない債務もあるので注意が必要です。例えば税金や養育費の支払義務等が主なものとしてあげられます。

2 破産手続きのメリット・デメリット
 破産手続きには,以下のメリット・デメリットがあります。ご覧頂ければわかるように,メリットに比べて,デメリットは一般にイメージされているほど大きなものではありません。

(1)メリット
 破産手続きでは,裁判所が破産手続きを開始することを決定した日を基準に,その時点で保有していた財産を配当し,それでも残った債務が,免責されることになります。
 よって,開始決定日以降に得た収入は,配当に回さずに今後の生活に充てるために使ってよく,生活の立て直しを図っていくことができます。

(2)デメリット
 ① 所有する財産(例えば住宅等の不動産)は基本的にお金に換えて債権者に配当する必要があります。(ただし,破産後の生活のため,原則として60万円までの現金は保有しておくことができます。)また,ローンが残っていると物を引き揚げられたり,自分の債務を保証してくれている人に対して債権者から請求が行くことになります。
 ②信用情報機関などにいわゆるブラックリストとして登録され,以後5~7年くらいは自己名義での借り入れができなくなる可能性があります。
 ③一度免責決定を受けると,それ以降7年間は再度の免責を受けることができません。
 ④一定の職種の場合(税理士,宅地建物取引業者,警備員など)は,免責許可の決定が確定するまで資格制限があります。
 ⑤官報に記載されます。(なお,戸籍や住民票に記載されることはありませんので,ご安心下さい。)

3 破産手続きを取る際に気をつけなければならないこと
 最後に,破産手続きを取る場合に気をつけなければならないことを説明します。
 まず,財産隠しや,知り合いへの贈与など,配当に回すべき財産を減少させる行為は絶対にしてはいけません。免責が認められなくなってしまう可能性があるからです。また破産手続きの中で贈与契約等は取り消されることになります。財産は勝手に処分したりせず,裁判所に対しては現状をすべて正直に伝える必要があります。 
 次に,もう破産する予定でいるのに新たな借金をしてはいけません。カードを使うことも借金にあたりますので,注意が必要です。
 もう一点気をつけなければならないのは,破産の前後に一部の債権者にだけ返済することです。
 近しい人やお世話になった人にだけは迷惑をかけたくないとの気持ちから,一部の人に対してだけ破産手続きの直前に返済してしまうケースもよくありますが,破産手続きは原則として債権者をその債権の額に応じて平等に扱う制度ですので,このような行為は許されません。これらも,破産手続きの中で後から取り消されることになってしまいます。

4 最後に
 破産手続きについて,大まかに説明してきましたが,その他にも気をつけなければならない点や細かな決まりなどもあります。また,状況によっては,破産までしなくとも任意整理や民事再生で生活をたてなおしていく道も考えられますので,ぜひ一度弁護士にご相談下さい。

 執筆者:山下江法律事務所 弁護士 新名内沙織 (広島弁護士会所属)

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