コラム

 公開日: 2012-06-06  最終更新日: 2014-07-04

弁護士・江さんの何でも法律相談「子どもが先生に殴られケガをした」

2012/6/4(月)15:30頃~FMちゅーピー(76.6MHz)
「なやみよまるく~江さんの何でも法律相談」での、
OA内容をお届けします。(※内容を要約しております)
今回のテーマは、
「子どもが先生に殴られケガをした」について
教師 体罰

■子どもが先生に殴られケガをした
 相談者 43歳/女性

Q: 先日、中学2年の息子が先生から殴られケガをしました。
 先生に抗議したら、「息子は授業態度が悪く、口で言っても聞かなかったので仕方がない。あなたのしつけにも問題がある!」と、逆に注意を受けました。
 確かに、息子の態度も良くなかったのでしょうが、ケガを負うほどの事態に、仕方がない…で片付けられることに、納得がいきません。
 このようなことを弁護士に相談するのは、筋違いかとも思いましたが、誰に相談すれば良いのかわからず、メールを送りました。
 ということです。江さん、何か良いアドバイスをいただけますか?

A: はい、お答えしましょう。
 まず、言うことを聞かないから手を上げられても仕方がない!というのは、どうかと思いますね。
 確かに学校教育法には「教員は、教育上必要があると認めるときは、生徒・児童に懲戒を加えることができる。」と定められています。
 一方で「ただし、体罰を与えることはできない」と付け加えており、体罰は禁止事項です。

Q: 懲戒を加えることはできるが、体罰を与えることはできない…これは境界が非常に難しいですね。

A: そうですね。懲戒と体罰の違いがわかりにくいですよね。
 言葉の意味としては、懲戒は、不正または不当な行為に対して、制裁を加えるなどして、こらしめること。
 特別の監督関係または身分関係の紀律の維持のために、一定の義務違反に対して制裁を科すること。となっています。

 これに対して、体罰は、肉体に直接苦痛を与える罰。という様に説明されています。
すなわち、学校教育法第11条にいう「体罰」とは、懲戒の内容が身体的性質のものである場合であり、すなわち、なぐる・けるなど、身体に対する侵害を内容とする懲戒そして被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒のことを指します。
 たとえば「端坐(正座のことですが)・直立等、特定の姿勢を長時間にわたって保持させるというような懲戒は体罰の一種と解せられなければならない」と定義づけられています。

Q: なんとなく、わかってきました。
 今、江さんが説明してくださったことを基本に考えると、この相談者の息子さんが受けた行為は、体罰と言っていいようですね。

A: そうですね。相談者からの情報だけで考えると、この中学校の先生のした殴打行為は、「体罰」に該当し違法ということになると思います。

Q: では、先生の行為に対する相談者のしかるべき対応策は、どのようなことが考えられますか?

A: その先生に生じる責任は、3つあります。
 まず、刑事上の責任
 次に、民事上の責任
 そして、行政上の責任。
 被害者は、この3つの責任を追及することができます。

 刑事上の責任に関してですが、被害者はその先生に対し、暴行罪ないし傷害罪で刑事告訴することができます。
 体罰は教育上のものであれ、原則として犯罪となりますからね。

 そして民事上の責任に関しては、被害者は、治療費や精神的損害について損害賠償請求をすることです。

Q: かなり大きな問題に発展させることもできるのですね。
 この請求相手は、先生本人が対象となるのですか?

A: 対象はその先生と、雇っていた学校ということになりますね。
 ちなみに通っている学校が公立の時は、県や市、町が相手となります。

Q: 実際、教師が生徒に手を上げて、裁判沙汰になったという例はあるのでしょうか?

A: 意外にも、あるんですよ。
 女生徒の顔に2回、平手打ちをした教師に50万円の支払を命じた裁判例がありました。

 そして3つ目の行政上責任に関してですが、学校や教育委員会などに対して、その先生の懲戒処分をするように申し立てることです。

 ただ、一方的に手を上げられたから…というだけで責任を問う前に、まずはよく話し合いをするのがいいでしょうね。

Q: 江さん、先生の行為が、単なる懲戒権の行使に過ぎないのか、体罰に該当するかどうかは、どのような基準で判断するのでしょう?

A: そうですね。
 生徒に対する有形力の行使が懲戒権の行使として相当と認められる範囲内にあるかどうかは、教育原理、教育方針を念頭に置き、生徒の身体的状況(年齢とか健康状態とか)、有形力行使の態様・程度、教育効果などを総合して社会通念に則り、具体的個別的に判定する、ということになります。

Q: 様々な状況・状態によっても、懲戒か体罰か…変わってくるということでしょうね。

A: そうですね。例えば先ほども少し触れましたが、「罰として立っていなさい!」というこらしめをした場合、これだけを聞くと体罰ではないように思いますよね。
 ですが、教室の中の場合と炎天下、または寒空の下の場合とでは、罰を受ける側の身体に対する影響は全くちがいますよね。
 さらに言うと教室の中で立たされていたとしても、トイレにも行かせてもらえないとか、食事時間を過ぎて長く留められている、なんてことがあれば、肉体的に苦痛を感じるはずです。
 ここまでになると、体罰として判断せざるを得ないでしょうね。

 また、先ほどの判断基準に出た「有形力の行使の程度」についてですが、裁判例では、自習時間内に自席を離れて立ち歩く行為について、口頭で注意しても直らないので、教師が出席簿の背で頭を軽く叩いた行為は体罰には当たらないというものがありますが、例えば、出席簿の背で、頭に血が出るくらい強く叩いた場合は、体罰になると思われます。

Q: そうですね。ちょっとした懲らしめ行為でも、行き過ぎると体罰としての判断になりますね。
 よくわかりました。


■次回のテーマ
「画数が悪いので、子どもの名前を変えたい」について
2012/6/11(月)15:30頃~ FMちゅーピー(76.6MHz)

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