コラム

2012-03-16

弁護士コラムvol.20 「指導者の不注意で、スポーツ中に事故に遭ったら・・・」 笠原輔

山下江法律事務所 弁護士 笠原輔
 山下江法律事務所の弁護士の笠原です。

 最近はニュース等でも、中学校における武道必修化に伴う安全管理が、しばしば問題になっています。そんなこともあって今回は、指導者の不注意でスポーツ中に事故に遭った場合についての話です。(武道とスポーツは異なるものですが、その点についてはここでは深入りしません。)指導者の不注意でスポーツ中に事故に遭った場合、私たちは誰に対して責任を追及すればよいのでしょうか?

①私的団体に属する指導者の指導中の事故の場合
(例:私立学校や民間スポーツクラブでのスポーツ中の事故)
 民法709条の定める不法行為による損害賠償請求をする場合と、民法415条の定める債務不履行による損害賠償請求をする場合が考えられます。
 まず、不法行為による場合ですが、民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と定めています。民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求は、指導者個人に対して追及することになりますが、民法715条1項及び2項に基づき、その指導者の使用者(学校やスポーツ施設等)に対しても損害賠償請求できます。使用者責任は、個人に対する損害賠償請求だけでは被害者が十分な救済を得られないことがあるために認められているものです。
 続いて、債務不履行による場合ですが、民法415条の第1文は、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。」と定めています。債務不履行による損害賠償請求の場合は、債務者が債権者に対してスポーツの指導をするという民法上の契約関係があり、債務者がこの契約に付随する安全配慮義務に違反したことによってスポーツ事故が起こったとして、損害賠償請求することになります。この場合、指導者は、上記契約の債務者の履行補助者という位置付けになり、損害賠償責任を負う主体は、上記契約の債務者である学校やスポーツ施設となります。

②公的団体に属する指導者の指導中の事故の場合
(例:国公立学校での授業や部活動での事故)
 国公立学校における事故の場合は、教員が公務員であることから国家賠償法1条に基づき損害賠償請求することになります。国家賠償法1条は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と規定しています。そして、最高裁判所は、「国家賠償法1条1項にいう『公権力の行使』には、公立学校における教師の教育活動も含まれる」としています(最高裁昭和62年2月6日判決)。
 しかし、指導者である公務員個人に対して、被害者が損害賠償請求することはできません(最高裁昭和47年3月21日判決)。ただし、指導者である公務員個人は、事故が起こったことについて故意または重過失があった場合は、国家賠償法1条2項により、国や公共団体から求償されることがあります。

 スポーツ中の事故について損害賠償請求する場合、過失(=注意義務違反)や安全配慮義務違反の有無が問題になります。そして、注意義務や安全配慮義務の範囲については法律の専門家による検討が必要不可欠です。スポーツ中に事故が起こってしまったとき、具体的な問題解決は当事務所にご相談下さい。

 執筆者:山下江法律事務所 弁護士 笠原輔 (広島弁護士会所属)

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