コラム

2011-12-06

弁護士・江さんの何でも法律相談「借家明け渡しの際、敷金を返してもらえない」

2011/12/5(月)15:30頃~FMちゅーピー(76.6MHz)
「なやみよまるく~江さんの何でも法律相談」での、
OA内容をお届けします。
今回のテーマは、
「借家明け渡しの際、敷金を返してもらえない」について
山下江 FMちゅーピー なやみよまるく

■借家明け渡しの際、敷金を返してもらえない
 相談者 45歳/女性

Q: 私の家族は、5年前から借家である今の家に住んでおり、家賃8万円、敷金は3ヶ月分を払っています。
 この度、引っ越すことになったのですが、大家さんは、古くなった畳の取り替えや、クロスの張り替えなどに費用がかかるので、敷金は返還できない。と言ってきました。
 返ってくると想定していた敷金を、引越費用分に充てようと考えていたので、返還されないとなると、困ります。
 そもそも敷金とは、返還されて当たり前…という私の考えが間違っていたのでしょうか?

A: 間違ってはいないと思いますね。敷金というものは原則返ってくるもの、ということなので大家さんの言い分がおかしいと思いますよ。
 敷金とは、建物賃貸借契約を結ぶ際に、明け渡すまでに生じた賃貸人(すなわち、大家さん)の賃借人(すなわち、借主、本件での相談者)への一切の債権を担保するものです。

Q: 一切の債権を担保…とは、どのようなものですか?

A: 法律用語を使うとわかりにくいですね。これは、大家さんが相談者(借主)に対して請求することができる権利、これを保障するためにいったん預けるということです。
 この、一切の債権、請求できる権利に何があるかというと、例えば、借主が家賃を滞納するようなことがあった場合、支払っていない家賃を支払え、と言う請求権ですね。
 あるいは、借主が不注意によって家の中を壊してしまった、あるいは汚してしまった場合に発生する、大家さんの借主に対する損害賠償請求権など、このような権利のことをさします。

Q: いろいろな請求権なのですね。
 この方が大家さんから言われた「古くなった畳やクロスの張り替え」の代金について、江さんは先ほど、敷金返還を拒む理由にならないとおっしゃられました。ということは、これらの代金は、この「一切の債権」には含まれないということでしょうか。

A: はい、そのとおりですね。
 畳やクロスは生活していれば自然と劣化・損耗してしまうのが当然です。
 このように自然消耗してしまうものについては、建物賃貸借契約においては、借主が何もしなくても通常発生するものですから、借主の責任によって家主に損害を与えたということはできません。
 ですから、これら単に「古くなった…」というものについては、敷金とは無関係の問題ですね。
 大家さんがこの修繕費用を敷金で賄うことは、原則としてできません。

Q: そうなんですね。この方にとっては大変よいことですね。敷金は返してもらえるのでしょうか?

A: 原則そうですね。

Q: ここで気になるのが、よく引っ越す際に、「元通りにして出て行ってね」なんてことを家主さんに言われることがあると思います。
 「元通りにする」ということは「新しくしなさい」ということではないのですか?

A: そうですね。確かにこれはありますね。
 これを法律的には、「現状回復義務」と言います。
 賃借人(借りている人)には、この現状回復義務というものがあるのですが、これは借りている人が中に新しく何かを設置したり、あるいは壊したりしたものを元に戻しなさいよ、ということであって、畳やクロスの劣化など自然消耗の問題とは無関係です。

Q: そうなんですか。お便りの中に、こんなことが書いてあります。読んでみますね。
 「借家の賃貸借契約書には、室内建具、壁紙等の破損、汚れは一切賃借人が負担する。と記載されている」ということなんです。

A: 契約書にそう書いてあるのですね。
 一般的にこのように書いてある契約書はありますが、多くの裁判例では、このような契約内容は原則として無効だという判断がされています。

Q: 畳やクロスの修繕費用を負担しなくて、大丈夫なんですね?

A: そうですね。
 ただ、この判例も全てがそうというわけではありません。
 判例には、「この契約内容について合理的内容が存在し、借主がこの契約内容を十分認識して意志表示したなどの特段の事情がある場合は、例外的に有効となる余地も残されている」とあります。

 特に、建物賃貸借契約書の中に、貸主が負担する部分と借主が負担する部分、大家さんと借りている人の負担部分ですね。これが明確に分けて記載されている場合は、借主がその内容を十分に認識していたと認定される場合が多いので、一概に無効だとも言えません。

Q: なるほど、例外もある…ということですね。
 ただ、相談者の方は、その契約内容というものについて、合意しているようにも思えませんし、これは、やはり無効だと主張しても良いのでしょうか?

A: そうですね。もっと詳しく聞いて、実際にその契約書を見てみないとわかりませんが、お便りの内容からは、今回の場合、特段の事情があるとはうかがえません。
 古くなった畳、クロスの張り替えの代金は、通常の賃貸借契約で家賃を払っているわけで、そして家賃には当然、使用していくうちにその物が古くなっていくということも含まれています。
 一般的な契約の条項の中の「壁紙等の破損、汚れは一切賃借人が負担する」という程度では、さきほどの判例であるような特段の事情がある場合とは思えません。
 おそらくこの契約内容は無効であり、敷金については、もちろん壊した物や未払いなどがあれば差し引かれるのは当然ですが、ちゃんと返してくださいということは十分できると思いますね。

Q: 敷金は返ってきそうですね。よかったです。まぁ、大家さんは、契約書に記載があるから!と簡単には引き下がらないかもしれませんが、どうぞ自信を持って無効であることを主張していただきたいですね。

■次回のテーマ
「共有物の分割の仕方は?」について
2011/12/12(月)15:30頃~ FMちゅーピー(76.6MHz)

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