コラム

2011-11-08

弁護士・江さんの何でも法律相談「印鑑の押していない契約書は有効ですか?」

2011/11/7(月)15:30頃~FMちゅーピー(76.6MHz)
「なやみよまるく~江さんの何でも法律相談」での、
OA内容をお届けします。
今回のテーマは、
「印鑑の押していない契約書は有効ですか?」について
山下江法律事務所 広島 弁護士

■印鑑の押していない契約書は有効ですか?
 相談者 33歳男性

Q: 当社は、ビルの所有者Aさんとの間で、事務所の賃貸借契約を締結しました。
 ところが、当社の担当者が急いでいたせいか、同契約書には貸主であるAさんの署名はあるのですが、印鑑が押してありません。
 こうした契約書は有効なのでしょうか?

A: そうですね。
 契約書としては、印鑑を押す場所に印鑑を押していないのは不十分ですが、契約内容について、この当社とAさんの間でその内容、意思とが合致している場合は、契約は立派に成立しているということになります。
 前にもこの番組で述べたことがあると思いますが、契約の成立は、両当事者の意思の合致により成立するものであり、たとえ契約書がなくても、たとえハンコがなくても、この契約が成立するのが原則です。
 ですから、あるべきところにハンコがないということで契約書が不十分でも、その両者の意思、すなわち、いつからいつまで、賃料がいくらで、そしてそこに記載されている内容について両者がそれでよい、ということで意思が合致しているときは、この賃貸借契約は立派に成立していることになります。

Q: そうでしたよね。
 契約は、あくまで当事者の意思が合致していれば成立するのでしたね。

A: はい、では、この契約書はなんのためにあるのかというと、その契約の成立を証明するための重要な証拠としての意味を持っています。
 しかし、それがなければ契約が成立しなかったとは言えないということです。

Q: では、契約書に署名と捺印がある場合と、署名はあるが印鑑を押していない、という場合とはどのような違いがあるのでしょうか?

A: その契約書の証明力に違いがあるということです。
 もちろん、このAさんは署名をされていますよね。
 ですからその内容についてAさんが同意しているということは言えますが、それに加えてハンコを押すということは、同意についてさらに最終的に念を押すという意味合いがあるので、信用力が高いということになります。
 ちなみに外国には、そもそも押印・捺印の制度が無く、署名だけで良いという国もたくさんあります。
ですが日本では、古くから印鑑の制度が発展しており、押印・捺印は、書面に信用性を付与する、信用性を高めるものとなっているのです。

Q: ところで、印には実印と認印がありますが、この違いは何でしょうか?

A: はい、一般的なイメージとしては、実印のほうが立派で、認印はそうでもないというイメージでしょうが、実は印鑑が立派かどうかということではないです。

Q: 見た目だけではないのですね。

A: ええ。見た目ではないのです。
 たとえ三文判であっても実印にはなるのですね。
 すなわち「実印」というのは、公的に届け出た印章(ハンコ)ということです。
 個人の場合は、登録しようとする印章を住民登録してある市区町村役場か出張所に持参し、印鑑登録申請を行うことになります。
 そうすればそれは実印になります。
 印章は市販のもの、300円のものでも三文判でも登録申請をすれば、それが実印となる訳です。

 会社の場合は、会社の本店所在地を管轄する法務局に設立登記をする際に届け出るハンコであり、これがその会社の代表者印となります。

 そして「認印」というのは、この実印以外のハンコ全てを言います。
 この実印と認印の差異ですが、実印が必要だと法律で定められている場合がいくつかありまして、そういう場合を除いて、法的な効力にほとんど差異はないと言ってよいでしょう。
 しかし、争いとなったときは、実印の方が証明力が強い、すなわち、本人が押したと強く推定されることになります。

Q: 実印が必要と法定されている場合というのはどのような場合ですか?

A: 例えば、不動産の売買をした際に、不動産の所有権移転登記をしますよね。
 そのときに必要な書類がありまして、自分は確かにこの不動産を売ったよ、という売主側のハンコ、これは実印ではないといけません。

 あるいは、遺産分割協議に基づいて相続登記をするときの遺産分割協書などです。
 例えば亡きお父さんから1人の子どもに登記するときに、相続人みんなが集まって遺産分割協議をします。
 その場合の遺産分割協議書のハンコも、やはり実印でなければいけません。

 すなわち、こういう重要な財産上の契約の場合には、その確実性・信用性を高めるために、法律により、実印を必要と定めたのです。

Q: よく分かりました。
 ところで、会社の印鑑には、丸や四角いものなど、いろいろな形があるようですが、それらに違いはあるのでしょうか?

A: そうですね。一般的に丸印とか角印とか呼ばれていますよね。

 丸印とは、会社の実印のことを通常は言っています。これは社長印、会社の権限を最終的に証明するものですね。
 通常これは丸印のなかに二重の円がありまして、外側の丸い円の中に「○○株式会社」、内側の丸い円の中に「代表取締役印」と刻印されています。これが丸印と呼ばれるものになります。

 それとは別に角印というのは、四角のハンコに「○○株式会社之印」と刻印されており、実印と認印の区別で言えば認印ということになります。

 会社のハンコという意味では、会社によっては、実印とは別に、銀行印を定めているところもあります。
 これは、取引銀行に届け出たハンコで、預金の払戻しや手形小切手の振出などで必要となります。もちろん、この銀行印として、別のものを作ってもよいですし、実印(社長印)をそのまま用いても構いません。これは自由です。

 少し大きめの会社になりますと、さらに担当者印を作っているところもあります。
 これは、担当者が職務上使用するハンコで、担当権限のあるものが押印したものであれば、法的にその会社に効力が及ぶことになります。

Q: 印鑑にもいろいろあるのですね。よく印鑑証明書を付けなさいと言われることがありますが、これは、何のためにあるのでしょうか。

A: これはですね、実印の場合は届け出るハンコなので、ハンコだけではそれが実印かどうかわからないわけですね。ですから、確かにこれは届け出たハンコですよ、ということを公の行政機関なりが証明するのが印鑑証明書なのです。
 実印が必要とされる場合、例えば、先ほどの不動産所有権移転登記などの際には、実印と共に印鑑証明書が必要となります。

Q: そこで威力があるわけですね。

A: そうですね。なお、注意点が2つあります。
 1つは、印鑑証明書が必要とされる場合は、3か月または6か月以内のものを要求されることが多いので注意が必要です。
 もう1つは、印鑑登録証(カード)により印鑑証明書を取得することができますが、実印と同カード、印鑑登録証明書を一緒にしておくと、勝手に同時に使用される恐れがあり危険ですから、別々に保管すべきです。

Q: そうですね。なるほど。印鑑の意味について、大変よく分かりました。
 印鑑が押してあることよりも、当事者の意思が契約書には大切であるという今日のお話、ありがとうございました。


■次回のテーマ
「契約解除はどのような場合にできますか?」について
2011/11/14(月)15:30頃~ FMちゅーピー(76.6MHz)

■契約トラブルの対処法↓↓↓
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