コラム

 公開日: 2011-10-18  最終更新日: 2014-07-04

弁護士・江さんの何でも法律相談「弟から遺留分の請求が…」

2011/10/17(月)15:30頃~FMちゅーピー(76.6MHz)
「なやみよまるく~江さんの何でも法律相談」での、
OA内容をお届けします。
今回のテーマは、
「弟から遺留分の請求が…」について
山下江法律事務所 相続問題 遺留分

■弟から遺留分の請求が…
 相談者 45歳女性

Q: 私たちは兄弟姉妹合わせて5人います。先日死亡した父が、その相続財産である時価1億円相当の株式を弟を除いた私たち4人に対し、各2,500万円ずつ相続させる。という遺言を残してくれました。
 その遺言通り、それぞれが取得したところ、弟から「遺留分減殺請求通知」なるものが送られてきました。
 これについて、私たちはどのように対応したらよいのでしょうか?

A: 相続関係のご相談では、よくこの「遺留分」という言葉がでてきますね。ここでおさらいしておきましょうね。
 「遺留分」とは、被相続人(亡くなった方)が、相続財産のうち一定の相続人に法律上、必ず残しておかなければならないとされている一定の割合額をいい、相続人は、この権利を主張できるものとされています。
 ここでの被相続人は相談者の死亡したお父さんです。

 すなわち、人は誰でも自分の財産を遺言等において自由に処分できる、これが原則なのですが、法律は、家族財産の公平な分配という観点から、一定の相続人に対し、一定の限度でこれを取り戻す権利を認めているのです。
 一定の相続人、というのは、配偶者、子ども、親です。兄弟姉妹は相続人ではありますが、遺留分減殺権はありません。

 このように一定の財産を取り戻す権利を一定の相続人に対して認める、これを「遺留分減殺請求権」といいます。
 本件のご相談の場合は、この権利を使って、弟さんが自分がお父さんの子どもであることによって当然法律上相続財産を取得することのできる権利、これを主張しているという流れです。

Q: なるほど、息子さんですものね。
 最低限度の取り分が確保されているという「遺留分減殺請求権」、この遺留分の一定額というのは、どのようにして割り出されるのでしょうか?

A: 今回の場合は死亡したお父さんの相続人が、兄弟姉妹5人であるので、この場合の弟さんの遺留分はその相続分5分の1のさらに2分の1、すなわち10分の1です。
 金額にすると、1億円の10分の1である1,000万円ということになります。
 したがって、弟さんは1,000万円ほど取得する権利が、たんにお父さんの子どもであるということから発生しているわけです。
 ですから他の4人の兄弟姉妹は、1,000万円を4で割った250万円ずつを弟さんに支払う義務が生じます。

 しかし、なぜ、弟さんだけに、相続させないような遺言になっているんでしょうかね?

Q: それがですね、どうやらこの弟さん、お父様が生きていらっしゃった時、賭け事で2,000万円の借金を負っていたことがあるらしく、その際に、お父様がご自分の所有していた土地を売って、その売却代金を弟さんに渡し、全額返済をさせた、という経緯があるようですよ。
 お父さんは、生前中に、弟さんには、ある程度の財産を渡しているから、これ以上、与える必要はない、と判断したのではないだろうか?と、いうことなんですが…。

A: なるほど。今の話がその通りであったとしたら、先ほどの遺留分、弟さんの取り分1,000万、という事情は少々異なってきます。

Q: あら?そうなんですか?

A: はい。この場合の遺留分の計算の仕方、遺留分がどれくらい発生するか、発生しないかも含めてですが…。
 お父さんは弟さんに、2,000万円の生前贈与をしたことになります。
 この場合には、お父さんの相続財産は1億円ですが、この2,000万円を持ち戻して合計1億2,000万円あったとみなされます。
 これを「みなし相続財産」といいます。
 遺留分を計算する場合には、この「みなし相続財産」を基準にして計算します。そうなると、この弟さんの遺留分は、この「みなし相続財産」の10分の1である1,200万円ということになります。

Q: あら、さきほど1,000万円でしたよね。200万円、増えてしまいました。
生前に2,000万円受け取っていて、さらに1,200万円を受け取るということになると、法律で決められているとはいえ、他の4人の兄弟姉妹は、納得できるでしょうか?

A: うん。それがちょっと違うのですね。そのようにはなりません。続けて話を聞いてください。

 この場合に、弟さんが主張できる遺留分がいくらになるかは、この1,200万円をもらえるというわけではなくて、もともと生前に2,000万を受け取っているので、生前に受け取っている金額と、この遺留分の金額を比較するということになります。

Q: 比較してみる…。

A: ですから、みなし相続財産が1億2,000万円あった。そのなかの弟さんの遺留分は1,200万円である。もともと弟さんは2,000万円受け取っているから、もうこれ以上渡す必要はないだろう、ということになるのです。

 すなわち、生前に受け取った金額が、みなし相続財産を前提とした遺留分である1,200万円に足りなければ、その分について、遺留分を請求できることになります。
 しかし、生前に受け取った金額が、この遺留分の金額を超えていれば、もはや遺留分を請求することはできません。

Q: もう2,000万円受け取っていますものね。

A: はい。ですから本件では、結局、弟さんが現在の時点で遺留分として取得できる財産はない、ということになります。
 さきほどの遺留分減殺請求通知がきたということであれば、これに対して反論として、弟さんは既に生前に2,000万円の贈与があったはずだと、だから弟さんには遺留分はない、と、だからあとの4人の兄弟姉妹にはこの請求に応える義務はない、支払う義務はない、ということを反論することになります。

Q: 権利ばかりを主張して、弟さんはこういう請求を出されましたけど、そういう都合の良い話にはならないということがわかりました。
 相続問題についてよく出てくる「遺留分」という権利。ここはしっかり覚えておきたいところですね。


■次回のテーマ
「遺留分を放棄させることは可能?」について
2011/10/24(月)15:30頃~ FMちゅーピー(76.6MHz)

■誰が相続人になれるかは、民法で決められています↓↓↓
 http://www.law-yamashita.com/105/10540/

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