コラム

 公開日: 2011-07-12  最終更新日: 2014-07-04

弁護士・江さんの何でも法律相談「愛犬が他人の飼い犬にかみついた」

2011/7/11(月)15:30頃~FMちゅーピー(76.6MHz)
「なやみよまるく~江さんの何でも法律相談」での、
OA内容をお届けします。
今回のテーマは、
「愛犬が他人の飼い犬にかみついた」について
弁護士 広島 損害賠償 山下江法律事務所

■愛犬が他人の飼い犬にかみついた
相談者 59歳女性

Q: 1週間くらい前、愛犬を連れての散歩中に、私の犬が、他人の飼い犬をかんでしまい、その犬は、入院・手術が必要となりました。相手方は、その費用を私に支払って欲しいと言ってきています。私は、支払わなければならない義務があるのでしょうか?

A: もう少し状況を聞かないとなんとも言えませんが、どうして、この相談者の飼っている犬が、他人の犬をかむことになったのでしょうね?

Q: 詳しいことが、書いてあります。
 私の犬は体長60センチの秋田犬で、ときどき人をかむこともありました。ただ、この日は大変おとなしくしていたので大丈夫だろうと思い、公園で少しの間だけ、鎖を外して自由にさせていたのです。そうしたら…ということです。

A: そういうことであれば、この相談者の方は、相手方の犬の治療費について支払う義務があると思われます。
 民法で、動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する義務があると規定されています。相手方の犬は他人の所有物ですから、他人に損害を与えたことになるわけです。

Q: 民法でそのような法律があるんですね。初めて知りました。

A: ただ、その条文に但し書きがありまして、その動物の種類及び性質に従って、相当の注意をもって保管していた、といえるときは、損害賠償義務は生じません。

Q: たとえば今回の場合、何がいけなかったのでしょう?

A: 60センチの秋田犬、その時はおとなしいとは言っても、時々人をかむことがあったんですよね。それは、その動物の種類及び性質に従って、相当の注意をもって保管していたとは言えませんので、通常の民法の規定が適用されます。
 すなわち、この相談者の方の飼っている秋田犬は、大型のどう猛性を有する犬とされています。ですから、鎖を外して自由にしてしまったということは、やはり問題になるでしょう。

Q: ただ、相手方の犬も、自由に走り回らせていた、ということになったらどうでしょう?それでも、大型でどう猛性があるからという理由で、賠償義務が生じるのでしょうか?

A: そうですね。当方の損害賠償義務が消えることはないと思います。ただし、相手方にも、その犬の保管に注意義務違反があったから犬がケガをしてしまったような場合には、相談者の方の責任は減額されることもあります。これは、前にも出てきた言葉がありましたね。

Q: ありました。「アイコロス」と書いて「ソウサイ」と読む、「過失相殺」のことですか?

A: そう、「過失相殺」です。すなわち、事故の責任(原因)が、加害者だけではなく被害者にもある場合のこと。
 被害者にも不注意があった、過失があった場合、被害者の過失割合を、加害者の責任から差し引こう(ソウサイしよう)というものです。
 
Q: ここの部分、散歩中の状況をさらに明確にしておく必要がありそうですね。もしかしたら、100%この秋田犬だけが悪くないかもしれませんものね。

A: そうですね。そういうことも考慮し、治療費のうちどれだけ負担するべきか・・・例えば、相手に40%の過失があったのであれば、こちらは60%の負担でよくなるわけです。 それと、もう一つ考慮しなければならない問題があります。

Q: なんでしょうか。

A: 相手方に対して、治療費だけではなく、慰謝料を支払わなければならない場合があることです。

Q: 慰謝料。どういうことでしょう。

A: 犬は、法律上「人」ではなく「物」ということになります。
 慰謝料というのは通常、人を傷付けた場合は傷付けた人(加害者)に支払義務が発生しますが、物を傷付けた場合は、支払義務は発生しないのが原則です。
 ですから、今回の場合、法律上で犬は「人」ではなく「物」ですから、慰謝料は発生しません。
 例えば、交通事故において相手方の車を壊しても、車を壊したこと対しての修理費などに負担は負うけれども、慰謝料は発生しません。

Q: 犬には慰謝料を払わなくてよいということですね。

A: 原則そうなります。
 ただし、被害者が犬との生活を、本当の家族のように楽しんでいて、被害者が犬の怪我に対して、通常の程度とは異なる並々ならぬ精神的ショックを受けて、寝込むなどの病的な症状を発生した場合などは、この被害者が受けた精神的ショックに対して、慰謝料の支払義務が生じることがあるのです。

Q: 被害者にとっては単なる「物」ではない場合、相当ショックですよね。

A: そうですね。そういう場合は慰謝料支払義務が生じるので、単に治療費だけでは済まない場合があります。
 やはり犬の管理は、散歩するにしても充分注意をしないと、思わぬ損害賠償義務を負うことがあります。

Q: よく分かりました。飼い犬の管理は、みなさん、どうぞ慎重に行うようにいたしましょう。そうですよね?江さん。

A: はい、そうですね。


■次回のテーマ
「認知症になった父が女性に金を…」について
2011/7/18(月)15:30頃~ FMちゅーピー(76.6MHz)


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