コラム

 公開日: 2017-12-12 

広島の弁護士・江さんの何でも法律相談「発見された3通の遺言書の効力は」

2017/12/4(月)13:30~FMちゅーピー(76.6MHz)
「なやみよまるく~江さんの何でも法律相談」での、
OA内容をお届けします。(※内容を要約しております)
今回のテーマは、
「発見された3通の遺言書の効力は」

遺言書 作成 弁護士 広島

発見された3通の遺言書の効力は

Q: 今月は「相続」「遺言」をテーマに、番組に寄せられましたご相談に、法律の専門家であるお立場からお答えをいただきます。
 江さん、今日も、よろしくお願いします。

A: はい、よろしくお願いします。

Q: 今日は、65歳の女性からいただきましたご相談に答えていただきたいと思います。
 早速ご紹介しましょう。

 「先日、父が亡くなりました。
 病気がちだった父は、もう長くないと思う…が口癖でしたが、91歳まで生きてくれました。
 そんな父が書き残した遺言書が、机の中から出てきました。
 それも、2通。
 さらに、公正証書遺言まで出てきて、全部で3通の遺言書が存在しています。
 これらはまだ、内容確認ができていない状態ですが、どの遺言書が正式なものになるのでしょうか?
 ひとつは平成20年に書かれたもの、2通目は公証人役場で作成された平成21年に作成されたもの、そして3通目は今年に入って自分で書いたものです。
 遺言書が複数ある事自体、想像すらしていなかったので驚いています。
 この場合、どうすればよいのでしょうか?」

というご相談です。
 たしかに、遺言書があるか、ないか、の話は聞きますが、遺言書が3通って、聞いたことがありません。
 江さん、このようなご相談、実際にありますか?

A: はい、あります。
 遺言書はご本人が生きているうちは、何度でも作成し直すことが可能です。
 遺言書を書いて準備していたのに、それから何年も経ち、自分をとりまく環境が変わり、気持ちも変わり、状況も変わり…改めて作成し、前に書いた遺言書を破棄していなかったというケースは、結構あります。

Q: なるほど、前に書いた遺言書を破棄しないと、遺言書は複数存在することになりますね。
 では、同じ人が書いた複数の遺言書、どの遺言書が正式な遺言書となるのでしょう?

A: ご本人が亡くなった後、内容の矛盾する遺言が複数発見された場合には、最も新しい遺言書が優先されます。

Q: 矛盾する遺言書とは、例えばどういうものですか?

A: 同じ遺産について、遺言書によって相続させる人が違っている…とか。
 例えば、前の遺言では「自宅は長男に相続させる」と書いてあったのに、後の遺言では「自宅は長女に相続させる」となっていたとしましょう。
 自宅はひとつしかないのに、長男に譲ろうとした思いと、長女に譲るといった思い…どちらを取るかで遺産分割が大きく変わってきます。

Q: たしかにそうですね。

A: このような、矛盾している内容については、死亡した日に近い方の遺言書が優先されます。

Q: これは法律で決められているのでしょうか?

A: はい。
 民法第1023条では、前の遺言が後の遺言と抵触する時は、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」と定めています。
 ですから法律に基づいて判断すると、先ほど挙げた例は、自宅は後に書かれた遺言通り、被相続人の長女が相続することとなります。

Q: なるほど、では、前の遺言書と後の遺言書の内容が違っていた…という場合はどうなるのでしょうか?
 例えば、前の遺言書で、○○銀行の貯蓄は長男に相続させる。とあったとします。
 後の遺言書では××銀行に預けている貯蓄を長女に相続させる。となっていた場合。
 やはり後の遺言書が正式な遺言書となるのでしょうか?

A: これについては、どちらも有効となります。
 というのも、先ほど申し上げたように、前の遺言が後の遺言と抵触する時は、その抵触する部分については後の遺言が優先されるということで、前の遺言の○○銀行の貯蓄と、後の遺言の××銀行の貯蓄は、遺産そのものが別のものですよね?
 ですからこの場合は、内容に矛盾が生じないとして、○○銀行の貯蓄の部分はそのまま生かされ、長男に、そして××銀行の貯蓄は長女がそれぞれ相続します。

Q: よくわかりました。
 ただ、江さん、今回のご相談に出てくる遺言書ですが、1通目と3通目はご自分で書かれた自筆証書遺言で2通目が公正証書遺言だったと書かれています。
 番組でも遺言書を作成するなら公正証書遺言にされることを薦めていますが、公正証書遺言が優先となるといったことはないのでしょうか?

A: あ~そうですね。
 そう勘違いしてしまうかもしれませんね。
 私が公正証書遺言を薦めている理由は、公証人役場で専門家が関与することで、書き間違えのチェックができ、被相続人の意思を正確に残すことが可能となったり、偽造されることがない、また、遺言書が紛失したりということがなくなる、さらには亡くなった後、家庭裁判所での検認がいらないなど、数々のメリットがあるからです。 
 遺言書の形式が違うだけで、遺言書としては、自筆証書遺言も公正証書遺言も、同等な遺言書とみなされますので、これによる優劣はありません。
 ですから、前の遺言書が公正証書遺言で、その内容を変更した遺言書が自筆証書遺言であっても、前の遺言の内容と抵触する部分については、後の自筆証書遺言を優先することとなります。

Q: 思い込みって…怖いですね。
 全てにおいて冷静に物事を判断しないといけませんね。
 勉強になりました。

A: 丸子さんがなさった思い込みは、珍しくはないですよ。
 大体、自分で作ったものより、専門家の目を通して作ったものの方が、正式だという感覚はありますからね。
 しかし、遺言書に関しては、矛盾がある場合は後に書かれたものが最優先されるということを覚えておいてください。
 ただ、公正証書遺言を作成した後に自筆証書遺言を作成したとなると、この自筆証書遺言が偽造されたもの…と疑われ、争いに発展することもありますので、要注意です。

Q: そうですね~、そんなこともあり得ますね。

A: これは、今後ご自分の遺言書を作成される方へのメッセージとなりますが、遺言書を書き換える場合に、自筆の遺言書であれば、前に作ったものを破棄する、またその保管場所がわからなくなっている場合には、前に書いたものは全て撤回するなどの、明記をされておくと明確でよいと思います。
 また、今回の事例のように、公正証書遺言を作成したにもかかわらず、内容を変更したい場合には、公証人役場で撤回と内容変更の手続きをされることをお勧めしています。

Q: 遺言書があれば、遺産分割協議がスムーズに行われるといいますが、複数でてくると、それはそれで揉め事になる可能性が高くなるかもしれませんね。
 一度でも遺言書を書かれた方が、新たに遺言書を作成する場合には、前の遺言との関連性についても注意しなければなりませんね。

A: 遺言書も、有効となる遺言にするためには、いくつかのルールが存在します。
 公正証書遺言であれば、専門家の目を通りますので、特に問題はありませんが、例えば自筆証書遺言を作成する場合、遺言の全文、日付、氏名、全てを自分で書き、押印しなければならないわけで、ひとつでも欠けてしまうと遺言書としては無効となります。
 もし、不安であれば、弁護士など、専門家に相談をされるということをお勧めします。

Q: 遺言書の作成についても、弁護士を頼ることができるのですね。
 それではここで、山下江法律事務所のフリーダイヤルをお伝えしましょう。
 0120-7834-09 0120-7834-09 この番組名と同じ「なやみよまるく」と覚えてください。
 また、今日の番組の内容は、まちの専門家をさがせるウェブサイト「マイベストプロ」でもご覧いただけます。
 今日は、「複数の遺言書の効力」について答えていただきました。
 江さん、今日はありがとうございました。


■次回のテーマ 
「遺産分割で兄ともめている」について
2017/12/18 13:30~13:40 FMちゅーピー(76.6MHz)

■山下江法律事務所HP「相続でお悩みの方へ」

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