コラム

 公開日: 2015-10-20  最終更新日: 2015-11-07

熟年離婚で問題になりうること(3)(主に年金分割について)

 前回は熟年離婚で問題になりうることとして、財産分与(扶養的財産分与)と慰謝料について取り上げました。
 今回は、特に離婚後の生活保障の上で大きな意味をもつ、年金分割について触れたいと思います。
 
 年金分割は、平成19年4月から始まった制度です。たとえば厚生年金保険の場合、老齢厚生年金などの保険給付の額は、被保険者の標準報酬を基礎に算定されるので、結婚後専業主婦であったり、短時間のパート勤務しかしていない女性は、離婚してから就職が困難な可能性があるため、将来受け取れる年金額が非常に少なくなってしまいます。
  他方離婚をしても、勤めをしている夫は、そのまま退職後も満額で年金を受け取れる、そういった不公平を正そうと設けられました。
 当初はいわゆる熟年離婚の件数が増えるのではないかとの予測もあったところです。
 しかし、実際のところは思ったほど分割対象となる年金額自体が多くないことや、年金制度の改定などで年金額自体が年々下がっていることもあってか、件数の増加にまでは至っていないようです。

 年金分割の仕組みはなかなか複雑ですが、2種類ありますので、まずそれぞれを見ていきましょう。
 ➀ 合意分割(離婚分割とも)
    これは平成19年4月1日以後に離婚などした場合に請求できるもので、婚姻期間中の厚生年金の標準報酬が   分割されるというものです。
     現在の国民年金制度では、国民年金(基礎年金)の上に、厚生年金部分が載っている形になっていますが、上
   記のとおり、分割対象となるのは、厚生年金の被用者年金にかかわる報酬比例部分の年金額の算定の基礎にな    る、標準報酬などのみとなっています。
     ですから、基礎年金部分や年金基金、企業年金などは対象とならないため、注意が必要です。
     分割の割合については、最大で5割が上限とされていますが、当事者で合意ができれば5割と異なることも可能で
    す。
     たとえば、分割を請求している側が慰謝料額や財産分与の額などが十分で、老後の生活にあたって、分割割合    が5割より低くてもよい、と同意した場合は4割とか3割で定めることもできます。
     この、合意分割については、後述する3号分割と異なり、請求する側が他方の被扶養配偶者(いわゆる第3号
    保険者)でない場合でもできます。
     ですから、結婚後も夫婦揃って一貫して共働きであるが、夫が一時病気のため収入が減少していたことがあり、
    厚生年金の標準報酬について、妻が金額的に上回るという場合は、夫からも分割請求できることになります。
     

 ➁  3号分割
    平成20年5月1日以後に離婚した場合などに、婚姻期間のうち、平成20年4月1日以降の扶養に入っていた配
   偶者の、いわゆる第3号被保険期間中の、相手方の厚生年金の標準報酬を分割するというものです。
     こちらの分割については、請求する方が他方の被扶養配偶者として第3号保険者と認定された期間があることが    必要になります。
     分割割合は合意分割と異なり、当然に保険料納付記録等を2分の1の割合で分割することになります。

   熟年離婚は結婚20年以上の場合をいいますから、3号分割の方は問題にならず、合意分割が問題になります。婚  姻期間全体が対象になるため、熟年離婚の場合はこの部分の分割があるかないかで受け取る年金額が大きく変わっ  てくることになります。

   いずれの場合も、分割を受けると、厚生年金受給資格に応じた年金を受給することになりますが、自分が年金を受  け取る年齢に達するまでは老齢厚生年金は支給されません。また、基礎年金の額には影響しません。
   ただ、一旦分割をすれば、分割を行った元配偶者が死亡しても、自分の厚生年金受給は受けられることになります。

   特に熟年離婚を考えている女性は、年金を現に受給できるようになるまでの生活をどうやって確保するか、相手方か  ら受け取れそうな財産分与(あるいは慰謝料)などで十分か、離婚する時期とあわせてよく検討してみべきでしょう。

   なお、年金分割請求は離婚から2年以内に行わなければ、分割が認められなくなりますので、離婚後は速やかに手
  続きを行うことが必要です。

   島根県松江市の宍道湖畔にある、島根県立美術館の写真です。
   

■関連コラム:目次
熟年離婚で問題になりうること(1)(概要)
熟年離婚で問題になりうること(2)




   
   
   
   

    
    

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